2019年の世界経済フォーラム(WEF)にて、リンクトインは「第四次産業革命で活躍するために必要な10のスキル」の3位に「クリエイティビティ」を挙げている。なぜなら、クリエイティビティは競争力の確保、人間の能力の向上、未来のデザインなど、新たなビジネス価値創出・イノベーションをサポートすると考えられるからだ。これを踏まえ、クリエイティビティをビジネスに役立てられる書籍を提案しよう。

クリエイティブジャンプ

龍崎翔子
1,760円(税込)
文藝春秋

 非連続的な思考によって目の前の難題を突破する不思議な力——。著者はそれを「クリエイティブジャンプ」と呼ぶ。本書では、そうしたクリエイティブジャンプの思考技術を伝授している。クリエイティブジャンプは①本質をディグる※、②空気感を言語化する、③インサイトを深掘りする、④異質なものとマッシュアップする、⑤誘い文句をデザインする、の五つの要素で構成されている。その中でも、企業のアセット(資源)を再定義する①は概念を因数分解する「そもそも法」や「なぞかけ法」を使って斬新な発想方法を学べる。例えば、野球スタジアムでは野球観戦しながら飲酒を楽しめることから「野球スタジアムは、居酒屋である」と再定義している。また、⑤を解説する6章では、人やネットワークを資本として捉える現在の消費傾向である「社会的関係資本」を読み取り、企業のフォロワーのイメージにマッチするレビューをしてもらうことを推奨。キーワードは「UGC」(User Generated Contents)だ。方程式は「UGCの効果=質×量(マッチ度×説明しやすさ)」だ。ほかの企業との差別化要素を顧客が生き生きと語りたくなるようなサービス設計を心がけよう。
※情報を探す、掘り下げて調べるという意味の若者言葉。英語の「dig」に由来。

言葉でアイデアをつくる。

仁藤安久
1,650円(税込)
ダイヤモンド社

 本書は、ビジネスの現場で役立つアイデアを発想、検証、再構築する方法を紹介。アイデアを言語化し、言葉の不完全さを補完して強いアイデアを作るといった方法論を解説している。問題解決に資するアイデアを生み出す「アイデア分解構築シート」を巻末に挟み込んでいるので、活用してみよう。5章の「チームでアイデアを生み出す技術」の、モチベーション設計としてみんなが期待するリターンを共有する例も興味深い。「グロースリターン」(プロジェクトを通じてどう成長できるか)「コミュニティリターン」(プロジェクトを通じてどんなチームの仲間になれるか)などはやる気を引き出せそうだ。

ネガティブクリエイティブ

藤井 亮
1,760円(税込)
扶桑社

 ネガティブ思考は、失敗を避けクリエイティブを追求する能力として役立つ。本書は、ネガティブ発想の転換を図り、著者の考え方や仕事の仕方などをユニークなイラストも交えて紹介。例えば、インプット術では不快感を覚える対象を発掘し楽しいものに作り替えていくこと、企画術ではワクワクすることを無責任に始めてネガティブに突き詰め、魅力が深い企画に練り上げることなどを紹介。重要点にはマーカーを引きつつ読みやすく展開している。「違和感や異物感などのネガティブな感覚で人をつかむ」の章も興味深い。昭和レトロな演出を一例に違和感の要素を落とし込む方法は、企画書の1行、プレゼン冒頭など基本的な業務にも応用できそうだ。