昨今問題となっているパワハラやセクハラといった各種ハラスメントに対して、企業は相談窓口の設置や周知・啓発といった取り組みを行っている。しかし、「ハラスメントかどうかの判断が難しい」「適正な処罰・対処の目安が分からない」といった声も上がっており、これらはハラスメント対策における課題となっている。こうした背景の下、各種ハラスメントについて分かりやすく解説している書籍を取り上げる。

「ハラスメント」の解剖図鑑

宮本剛志
1,760円(税込)
誠文堂新光社

 本書では、パワハラやセクハラ、多様性の時代に即したジェンダーハラスメントやマリッジハラスメントといった全48種類のハラスメントを4章構成で解説している。ハラスメントの解説に当たり、はじめにそのハラスメントを表したイラストを大きく掲載しているため、イメージがつかみやすい。ハラスメントの解説ではハラスメントかどうか判断に迷う具体的な事例を紹介し、読者にこの事例がハラスメントに当たるかどうか質問を投げかける。そして、その事例がハラスメントに当たるかどうかの根拠と対処方法を解説してくれる。例えば精神的な攻撃を与えるパワハラとして、ミーティングに遅刻したAさんに対し会議の参加者の前で叱責し、その後またミーティングに遅刻したAさんに対し暴言を繰り返したという事例が紹介されている。こうした事例に対し、パワハラの法律上における定義である3要素と厚生労働省が分類したパワハラの種類である6類型を解説。そして遅刻を重ねるAさんに対する叱り方として、「自分を主語にしたI(アイ)メッセージで」「冷静に」「具体的に」「短く一つだけ」「変えられることに焦点を当てる」といったポイントの頭文字を取った「あ・れ・ぐ・み・か」というノウハウを紹介している。さまざまな場面で起こり得るハラスメントの判断方法を網羅できるだろう。

〔パワハラ・セクハラ〕裁判所の判断がスグわかる本

弁護士・元労働基準監督官 中野公義
2,750円(税込)
日本法令

 本書最大のポイントは、パワハラ、セクハラ、マタハラといったハラスメントが裁判所によってハラスメントとして認められた裁判例と認められなかった裁判例を紹介している点だ。過去の裁判例を参照することで、裁判所が行った事実認定のポイントを効率良く押さえられる。裁判所では、「ハラスメントか否か」という判断ではなく、その言動・行動について不正行為が成立し、損害賠償義務が生じるかを問題として判断することに留意するように述べている。Q&A形式で結論を述べた後に裁判例を紹介しているため、誰にでも分かりやすい一冊だ。

上司いじめ

國安耕太
1,760円(税込)
あさ出版

 本書のタイトルにもなっている「上司いじめ」は、部下や後輩による上司や先輩に対する不当な攻撃のことであると本書では定義している。上司いじめの被害に遭ってしまったときのポイントとして、「まずは落ち着いて冷静に対処する」ことが重要だ。そのためにはハラスメントに関わる法律の知識が必要だとして、パワハラやセクハラなどの法律についてかみ砕いて解説している。また上司いじめの対処方法として、会社への報告・問題行為に対する1対1の口頭注意や指導であると紹介。会社に相談しても問題が解決しなかった場合に備え、外部の相談窓口の一覧を付録として掲載している。万が一の事態に陥っても対処法を確認できる。