高校生や大学生が国内外から参加し
STEAMやSDGsに関するアイデアを発表

日本経済新聞社大阪本社が主催する「日経STEAM 2024シンポジウム」が2024年7月30日に大阪のATCホールで開催された。STEAM教育の推進や、文化・社会貢献活動の一環として実施された本シンポジウムでは、「学生サミット 未来の地球会議」や「常識を疑え! 高校生ポスターセッション」「デジタルアート展示&発表会」などのプログラムが実施された。ダイワボウ情報システム(DIS)は2023年に引き続き、同イベントに特別協賛するとともに、学生に対し学校とは異なる学びの場を提供する「DIS STEAMゼミ」を実施した。

 2022年から毎年開催されている日経STEAMシンポジウム。国内の高校生や大学生のみならず、海外の学生も参加した今年の日経STEAMシンポジウムでは「未来の地球をどう守るか」をテーマとするプレゼンテーション大会を実施した「学生サミット 未来の地球会議」に加え、身の回りのルールや自身の主観といった“常識”を疑うことをスタートラインとし、その検証結果を1枚のポスターにまとめて発表する「常識を疑え! 高校生ポスターセッション」、SDGsの達成目標の中から「自分たちが最も達成したいもの」を選択し、そのデジタルキャラクターを考案するコンテスト「デジタルアート展示&発表会」、そして「ICT(情報通信技術)で未来を変える。学びの学生生活」をテーマにさまざまなアイデアを発表した「DIS STEAMゼミ」が開催され、国内84の学生チームのほか、海外からも6チームが参加した。

 同シンポジウムではほかにも、STEAMを実際に体験できるコーナーや、「人類の歴史は探求の歴史! 偉人達の探求体験型講座」といったオープンセミナー、ブース相談会なども行われた。高校生や大学生だけでなく、小学生などの子供たちも訪れ、盛況のうちに幕を閉じた。

 本イベントリポートではこのDIS STEAMゼミおよび、「STEAM 体験コーナー」の様子にフォーカスを当て、紹介していく。

DIS STEAMゼミ

学校生活の課題をICTで解決する!
生徒や学生の視点で提案する最新ソリューション

日経STEAM 2024シンポジウムのプログラムの一つとして、日本経済新聞社とDISが開催した「DIS STEAMゼミ」。高校、大学合わせて14チームが参加し、ICTを活用したさまざまなアイデアを発表した。今年のDIS STEAMゼミではATCホールの大阪会場と、日本科学未来館7階未来館ホールの東京会場をオンラインでつなぎ互いに発表を行うなど、テクノロジーを活用した新たな試みも実施された。


 昨年に引き続き、今年も開催されたDIS STEAMゼミ。今年のテーマは「ICT(情報通信技術)で未来を変える。学びの学生生活」。急速に進化するICTへの理解を深め、教育現場におけるICTの活用を提案するコンテストだ。今年は前述した通り、大阪会場と東京会場をオンラインでつなぎ、発表が行われた。大阪会場からは11チーム、東京会場からは3チームが参加し、それぞれICTの利活用を想定した個性あふれる発表が実施された。登壇校は以下の通り。

【大阪会場】
・大阪教育大学附属高校天王寺校舎 ・兵庫県立神戸高等学校
・大阪電気通信大学 ・愛媛県立松山南高等学校
・大阪経済大学 ・関西学院千里国際高等部
・大阪府立千里高等学校 ・甲南女子高等学校
・武庫川女子大学 ・徳島県立徳島科学技術高等学校
・兵庫県立兵庫高等学校

【東京会場】
・世田谷学園高等学校 ・洗足学園高等学校
・豊島岡女子学園高等学校

表彰式!

 それぞれのチームの発表は、審査の上で最優秀賞1組、優秀賞2組、審査員特別賞2組が表彰される。審査員は、NEC パートナーセールス統括部 上席プロフェッショナル 藤井雅隆氏、サイボウズ マーケティング本部 パートナーマーケティング部 部長 平林佳華氏、インテル パートナー事業本部 副本部長 PCクライアントチャネル管掌 栗原和久氏、アマゾンウェブサービスジャパン パートナーアライアンス統括本部 ディストリビューションビジネス シニアパートナーディベロップメントマネジャー 速水由紀子氏、DIS 取締役 販売推進本部長 竹渕正治氏の5名が務めた。

 7分間の発表では、ICTを利活用することで学校生活の課題解決を実現するソリューションが紹介された。実際に紹介されたICTソリューションは、教科書やノートをデバイス1台に集約するデジタル教材、3Dホログラムを活用した講話サービスなど実に多彩だった。先進的なテクノロジーを活用しているだけでなく、開発予算や費用対効果、収益化に向けたビジネスモデルなども含めたプレゼンテーションを行い、将来的な実現可能性も感じさせた。

 発表後は会場を問わず、参加した生徒や学生から鋭い質問がされ、それぞれのチームの提案内容がより深められていた。

ATCホールのDホールで開催されたDIS STEAMゼミ。発表内容の質の高さはもちろんのこと、それらをまとめたスライド資料も視覚的に分かりやすく、聴衆や審査員も興味深く聞き入っていた。

東京会場とオンラインでつながる!

大阪会場と東京会場をオンラインでつなぐ初の試みも。東京会場側のチームが登壇する際は、大阪会場側の投映画面に登壇者の顔も表示され、質疑応答も会場を問わず積極的に交わされた。大阪と東京という距離感を感じさせないシームレスなやりとりを、ICTが実現していた。

 最優秀賞に選ばれた豊島岡女子学園高等学校の「互いに排反」は、「(通学時の)荷物が重い!」という課題に対して、2画面のタブレット端末とデジタル教材アプリを組み合わせた「SMADY」を提案。SMADYに教科書や教材、ノート機能を集約することで、荷物の重さを従来と比較して77%削減できるとメリットを語った。またAI音声解析機能を搭載することで使える英語の習得につなげたり、将来的にはハードウェアにスマートグラスを活用することで、より荷物の重さを削減したいという方向性も示された。

 審査員として講評コメントを述べたDISの竹渕正治氏は「ビジネスプランも練られており、社会実装の可能性が高い提案でした。チームワークも非常に良く、素晴らしいプレゼンテーションでした」と、その発表内容を評価した。

優秀賞
大阪経済大学 チーム名:岡島ゼミ6期生1班
すべての子どもたちが夢と希望を持てる社会に。

 優秀賞に選ばれた大阪経済大学の「岡島ゼミ6期生1班」は、「夢や希望を持つきっかけは、人との出会いが重要である」とし、3Dホログラムを活用した社会人講話サービスを提案した。3Dホログラフィックの市場予測も示しながら事業の将来性を提示するとともに、講演に対する質問をAIで集約し、講師が同じ質問に答える必要をなくすといったアイデアも紹介された。「わくわくする学習体験」の提案が評価され、受賞となった。

優秀賞
洗足学園高等学校 チーム名:まりもーず
「時間」、足りてますか。睡眠学習はどう?

 優秀賞に選ばれた洗足学園高等学校の「まりもーず」は、睡眠時間を有効活用して学習する技術「ユメタバース」を提案。夢を意識的にコントロールできる明晰夢状態を作り出せる既存デバイスの存在を紹介し、こうした技術を応用することで、擬似的な留学体験を夢の中で行えるようにする。時間が足りない生活の中で、睡眠時間を有効活用して学べる。夢のような技術ながらそれらの実現可能性を論理的に説明していることが評価され、受賞となった。

審査員特別賞
兵庫県立神戸高等学校 チーム名:楠
リラクラ

 審査員特別賞に選ばれた兵庫県立神戸高等学校の「楠」は、教師の目で発見できないいじめを早期に発見できるシステム「リラクラ」を提案した。教室に設置したAIカメラによって人間関係を把握するとともに、生徒に脈拍を計測するリストバンドを装着してもらうことで、ストレス値を計測し、データを基に生徒同士のトラブルを防止する。いじめ問題をAIカメラやリストバンドで解決する斬新な手法が評価され、受賞となった。

審査員特別賞
徳島県立徳島科学技術高等学校
チーム名:徳島科技情報科学コース
購買の混雑状況と商品在庫数の見える化

 審査員特別賞に選ばれた徳島県立徳島科学技術高等学校の「徳島科技情報科学コース」は、小型のシングルボードコンピューター「Ras pberry Pi」を活用し、校内のモニターなどに購買の混雑状況と商品在庫を見える化する仕組みを提案した。Raspberry Piを活用し、LAN内でのみ閲覧できるWebページに、待ち人数や時間、売り切れの商品などを表示するものだ。商品の在庫把握といった学生目線の提案が素晴らしいと評価され、受賞となった。

体験コーナー&シンポジウム

STEAM Labから大学の研究室まで
最先端のSTEAMの学びを体験しよう

日経STEAM 2024シンポジウムでは、来場者がSTEAMや最新のITを体験できるコーナーや、ポスター、デジタルアートの展示なども行われた。DISは昨今注目の集まるプロジェクト学習や創作活動を支援する一例として、「STEAM体験コーナー」を出展しており、幅広い年齢層の来場者が、それらの機器を体験した。

日経STEAM 2024シンポジウム会場のAホールでは、参加学生に新しいテクノロジーを体験してもらうSTEAM体験コーナーをDISが出展。DIS STEAMゼミの参加生徒のみならず、一般参加者の子供たちも訪れ、合成動画作成や3Dプリンターによる出力、ブロックプログラミング体験、AIによるイラスト生成、ドローンプログラミングといった最先端のテクノロジーを体験し、歓声を上げていた。
CAD&3Dプリンターコーナーでは、3D CADを使ったモデリングから、3Dプリンターによる出力までを生徒や学生が体験した。
ドローンプログラミングコーナーでは、スタートからゴールまで、障害物をよけて飛行するルートをプログラミングする体験を行った。
同じくAホールで行われたのが「常識を疑え! 高校生ポスターセッション」のポスター掲示だ。国内28チームの高校生が、サイエンスからジェンダー問題までさまざまな検証結果を1枚のポスターにまとめ、発表した。来場者による投票の結果、愛媛県立八幡浜高等学校が最優秀賞を受賞した。
Eホールでは「デジタルアート展示&発表会」のデジタルアートが展示されていた。14チームの高校生が、SDGs目標達成に向けたシンボルキャラクターを制作した。会場ではARアプリケーション「Adobe Aero」を活用することで、ARによる作品表現も行われた。来場者による投票の結果、最優秀賞となる上田バロン賞を洗足学園高等学校が受賞した。
Aホールでは複数の大学の研究室が体験コーナーを設置。研究室などから、普段触れることができない研究機材などが展示されるだけでなく、実際に手で触れて体験できるようになっていた。VR体験や自身のアバターを作る体験など、先端テクノロジーを体験する生徒や学生たちの姿でにぎわっていた。