【テーマ】AR(拡張現実)を業務に使う
ARグラスで移動中でも大画面を利用
ジワジワとブームになりつつあるARグラスは、本来コンテンツ視聴に向くデバイスだが、仕事にもなかなか役立つ。特に移動中に利用するのにはとても向いている。これからますます普及していくはずなので、ぜひ体験して活用してほしい。
モニターとして使えるARグラス
ARグラス、ARゴーグル、XRグラスなどと呼ばれる眼鏡型のデバイスがジワジワ人気になっている。ここ1〜2カ月ほどで、市中にて実際に利用している人を2名見かけて少し驚いた。
少しずつ流行しているとはいえ、それがなんなのかまったくご存じない方も多いだろう。ということで、今回はごくごく基本的なところから説明していこう。
今回は、XREALのARグラス「XREAL One」をサンプルに話を進めていく。個人的には一つ前のモデル「XREAL Air 2 Pro」を愛用している。いわゆるスペックアップ製品なので、今回の説明の範囲内ではさほど変わらない。
皆さんのご想像のように、XREAL Oneは眼鏡を掛けることで映像を視聴するためのデバイスだ。僕も初めて使うまでは“映画を見るものだろう”と思っていた。
ところが、実際に使ってみると実はシンプルな製品で、メガネの中で表示するモニターやプロジェクターと思えば分かりやすい。
例えば、PCやスマホに接続するとその画面が表示される。そこでWebブラウザーを開けばもちろん表示されるし、映画なども見られる。使い方としては、間違いなく外付けモニターなのだ。
使ってみるとあっけないほど簡単で、拍子抜けするはずだ。しかも、最近のモデルは非常に明るく画質がいい。XREAL Oneの場合は、目の前の空間に367インチの画面が広がっているように見える。実際のディスプレイサイズはとても小さく、仮想空間上でそのように見えるということ。目の前に広がる画面は確かに想像以上に大きい。
実際のモニターやプロジェクターの投影なら、近づけば細部もしっかり見える。だが、ARグラスの場合は、眼鏡の中の距離とサイズが決まっていて、近づくことはできない。つまり、細部が見にくいから近寄ることはできないわけだ。このあたりが、リアルなモニターとの現実的な違いだ。
数年前のモデルはドットのざらつきが目立ち、「こんなものか」という印象だったが、昨今は画質が相当向上している。実物のモニターを見ている程度の印象で視聴できるだろう。少なくとも、「画質が粗い」と感じることはないはずだ。

本来の役目は視聴だ
現時点で、ARグラスの本来の役目は動画の視聴だ。スマホなどに接続するだけで、目の前で大画面の映画やドラマが楽しめる。この体験は圧倒的に楽しく、また、非常に楽。僕は、出張などで飛行機に乗る際には必ず持参している。また、病院で入院していた際にも活用していた。特別なことを考える必要がなく、スマホで映画を再生したらXREAL Oneを接続するだけでOK。目の前に大画面の映像が広がる。ネガティブなポイントはほとんどないが、スマホのバッテリーの減りが早いことが気になるくらいだ。
飛行機や列車の中での暇つぶしが、素敵な映画館にいるかのように感じられるのが素晴らしい。画質・明るさともに文句なしだ。
そんな用途がメインで僕は愛用しているのだが、実は仕事にもなかなか役立っている。
移動中に仕事の資料を読む場合には、PCの画面よりも広くて楽なのだ。文字サイズを調整すれば十分に資料を読み込むこともできる。例えば機内で資料を読もうと思ったら、どうしても視線が下向きになり首がかなり疲れてくる。だが、XREAL Oneを使っていれば、どんな姿勢をしても目の前には資料が広げられるわけだ。極論だが、ホテルのベッドで寝ていて天井を見上げていたとしても、そこに資料を広げることができてしまう。
これは、かなり斬新な体験だ。もちろん、あらゆる姿勢で映画なども見られるわけだ。




操作はまだこれからだ
スマホなら画面をタップして、PCではキーボードやタッチパッドなどを利用して操作もできる。その気になれば、文字入力も十分可能だ。
だが、操作感はまだこれからと言ったところだ。キーボードやタッチパッドを見ずに操作することになるので、ある程度の慣れが必要になる。
グラスを透過する設定にしておけば、下を向くことでキーボードも見えるのだが作業によっては使いづらい。マウスやタッチパッドを利用してブラウザーを読む程度なら全く問題なく使える。また、タッチタイピングができるなら文字入力も現実的だろう。だが、手元を見ないと操作できない人はかなり厳しい。
完全に慣れの問題だとは思うのだが、うまく使いこなせない方は、わざわざこの環境で入力する必要もない思う。今後、もっと使いやすい状況になれば、いつでもどこでも目の前に大画面モニターが広げられるようになるのだろう。個人的には普通に活用できている。
PCには、「Nebula for Windows」というアプリが提供予定で、これをインストールすることで、複数の仮想ウインドウを広げることなどができるようだが、現時点では製品版のダウンロードはできない。Mac版はすでに使えるので利用してみたが、確かに実用性は随分アップする。Windowsの製品版の登場を待ちたいところだ。
ただ、あくまで外付けモニターとして使うだけでも導入する価値はあると思う。
現時点では、移動中の時間に映画などを観るのを主目的に購入して、たまに仕事に使う程度がお勧めだ。とはいえ、仕事でも動画を見る機会は増えているだろう。プレゼンや製品のプロモーション動画を見るのには十分だ。
まだこれから発展していくARグラスだが、実際に手に入れてみると現実的に使えることに驚くはずだ。
なお、視力矯正用の眼鏡を利用している人がXREAL Oneを使う場合、専用の度付きインサートレンズを作る必要があるので注意してほしい。