既存のOSやアプリケーションへの組み込みで
業務の生産性をアップさせてくれる生成AI

生成AIは、主にチャット対話を行うようなテキスト生成型と入力したテキストから画像を作成する画像生成型に大別できる。それぞれ日常的に話すような自然言語で指示文(プロンプト)を書くことでコンテンツを生成できる点が大きな特長で、それらを活用したさまざまなサービスが登場している。その中でも、ビジネスシーンに身近な生成AIを提供しているのが、マイクロソフトとアドビだ。

今後は既存のOSやアプリにも生成AIが組み込まれていく
ユーザーの検索作業やコンテンツ作成をアシスト

 マイクロソフトは、生成AIに対する取り組みを強化している。その一環として、BingChatという新しいサービスを提供している。BingChatは、ユーザーと自然な会話をしながら、様々な情報やコンテンツを生成することができるチャットモードの検索エンジンである。BingChatは、バランス、クリエイティブ、プレシジョンの3つのモードを切り替えることができ、ユーザーのニーズに応じて最適な回答を提供する。また、画像や文章などの創造的なコンテンツも生成することができる。マイクロソフトは、生成AIに対する責任を重視しており、安全性や倫理性に配慮した開発を行っている。生成AIは、人間の知識や創造力を補完するものであり、人間の価値や尊厳を尊重するものであるという原則に基づいている。マイクロソフトは、生成AIの可能性と課題について、社会と共に学び続けることを目指している。

 上記の文章はマイクロソフトが提供するWebブラウザー「Microsoft Edge」で提供されている生成AI「Bing Chat」における「コンテンツ作成」機能で生成した文章だ。生成された文章に対しての加工・編集もBingのチャット機能を利用して行った。文中の「バランス、クリエイティブ、プレシジョン」は、日本語版ではそれぞれ「よりバランスよく、より創造的に、より厳密に」といった表記になるが、誤りではないだろう。今回は文章のトーンを「ニュース」、形式を「段落」に設定して生成したが、トーンを「プロフェッショナル」形式を「報告」とすれば報告書のドラフトが簡単に作成できる。

 2022年11月に公開されて以降、利用者が急増し、生成AIの代名詞になりつつあるAIチャットボット「ChatGPT」。マイクロソフトはそのChatGPTを開発したOpenAIに継続的な投資を行っており、2023年1月16日(米国時間、以下同)にOpenAIのGPT-4、GPT-35-Turboを含む強力な言語モデルへのREST API アクセスを実現する「Azure OpenAI Service」の一般提供をスタート。そして2023年1月23日にはOpenAIに数十億ドル規模の投資を行うことが発表された。それ以来、マイクロソフトはOpenAIとのパートナーシップをさらに強化している。

企業向けに提供されているBing Chat Enterprise(プレビュー版)。コンシューマー向けと同様に、「より創造的に」「よりバランスよく」「より厳密に」という三つのモードから選び、テキスト生成が可能だ。Bing Chatは当初、Edgeブラウザーのみでの利用に限定されていたが、現在はGoogle Chromeなど他社Webブラウザーからでも使える。
EdgeブラウザーにはBing Chatが標準で組み込まれており、右上のアイコンをクリックするとチャットがスタートできる。記事冒頭のコンテンツ作成もこのアイコンから行う。またPDFを開いた状態でBing Chatを開き「このPDFを要約して」など指示をすると、PDFから情報を読み取って要約テキストを生成してくれる。

ユーザーに寄り添う
AIコンパニオンを目指す

 次世代のOpenAIモデルを採用したサーチエンジンとして、マイクロソフトが2月7日に発表したのが、新しい「Bing 検索エンジン」と「Microsoft Edge」だ。新しいBingは、対話型AIチャット「Bing Chat」による検索やメールの下書きといったクリエイティブな作業が行える生成AI機能を有していることで話題になった。7月18日からは仕事のためのAIチャットとして「Bing Chat Enterprise」のプレビュー版の提供をスタート。コンシューマー版のBing Chatとの違いは、業務データが保護されており、ユーザーデータがAIモデルの訓練に活用されるようなことがない点にある。企業で生成AIを利用する場合、入力したデータを学習されてしまうことで、ほかのユーザーが利用したときに生成AIがその情報を回答してしまい、情報漏えいが発生するリスクが懸念されていたが、Bing Chat Enterpriseであればそのリスクがないため、企業でも安心して生成AIを利用できるのだ。

 マイクロソフトでは、これらのAI機能をユーザーにとっての「Copilot」(副操縦士)に位置付け、同社の主力製品に大規模言語モデル(LLM)を使用したAIアシスタントとして搭載することを発表している。例えば、Windows11のメジャーアップデートによって、AIを搭載したBing Chatへタスクバーからアクセスできるようにすることや、同社が提供するWord、Excel、PowerPoint、Outlook、TeamsなどのMicrosoft 365アプリと連携して動作する「Microsoft 365 Copilot」などだ。マイクロソフトが買収したソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」にはすでにAIコーディングアシスタントとして「GitHub Copilot」が搭載されており、コードの自動生成や補完などをサポートする。

 マイクロソフトは、9月21日にこれらのCopilot機能を総称して「Microsoft Copilot」とすることを発表。また9月26日に提供がスタートしたWindows 11 Updateによって、タスクバーやキーボードショートカットからBing Chatの機能を呼び出せる「Copilot in Windows」のプレビュー版がリリースされた。Copilot in WindowsではBing検索で提供されていたBing Chatによる検索機能のほか、自然言語による指示でアプリケーションを開いたり、Windowsの設定を変更したりすることが可能になった。例えば背景画像の変更やダークモードの設定などもCopilotに入力すれば対応してくれる。テキストだけでなく音声入力にも対応する。

 Microsoft Copilotが目指している姿は、ユーザーに寄り添うAIコンパニオンだ。Windowsの設定を自然言語で行えるCopilot in Windowsのように、Microsoft 365 Copilotではドラフトの自動作成を行ってくれたり、簡単なプロンプトで高品質なプレゼンテーション資料を作成したりと仕事のサポートをしてくれるようになる。Bing Chatも本質的には同様であり、ユーザーがこれまで行ってきた検索という行為をCopilotが代わりに行い、内容を要約して文章として生成する。マイクロソフトが提供するAzure OpenAI Serviceを活用して社内向けの生成AIサービスを利用する大手企業も登場しているが、中小企業には自社専用のAIアシスタントを開発することはなかなか難しいだろう。そういった中小企業のユーザーにとって、より身近で効果的に生産性を向上してくれる存在が、Microsoft Copilotになりそうだ。

アップデートにより、Windows11に標準でCopilot in Windows(プレビュー版)が搭載された。タスクバーに表示されたCopilotのアイコンをクリックすると、右側にCopilot in Windowsが表示される。Bing Chatと同様に質問に回答するような対応のほか、自然言語でPCの設定を変更することも可能になった。

クリエイターの権利に配慮した
商業利用可能な画像生成AI

アドビ
阿部成行

 テキスト生成AIより以前から注目が集まっていたのが、画像生成AIだ。しかし画像生成AIにはインターネット上にある画像を学習元としていることから、その学習元のクリエイターの権利を軽視しているという声や、生成した画像が意図せずIP(知的財産)を侵害してしまう可能性があるという懸念もあった。

 そうした画像生成AIに対する懸念点を解消した画像生成AIとしてAdobeが提供しているのが「Adobe Firefly」だ。2023年3月21日にプライベートベータ版が提供され、9月13日には一般提供がスタートした。同時に商用利用が可能になり、企業が営利目的に生成したコンテンツを利用できるようになった。

 Adobe Fireflyによる画像生成AIモデルは、自社のストックフォトサービス「Adobe Stock」の写真やベクター画像、オープンライセンス画像、著作権が失効したパブリックドメイン画像で学習している。アドビ GTM・市場開発部 プリンシパルビジネスデベロップメントマネージャー 阿部成行氏は「Adobe Stockの中でも、クリエイターが機械学習に同意いただけたデータ、かつ他社のIPに触れないコンテンツを当社できちんとキュレーションして学習させています」と語る。

 Adobe Fireflyの機能は現在、デザインツール「Adobe Express」(PC版Webアプリケーションのみ)、画像・写真編集ソフトの「Adobe Photoshop」やグラフィックデザインソフト「Adobe Illustrator」といったCreative Cloud製品に統合されているほか、誰でも画像生成AIを利用できるWebアプリケーションとして「Adobe Firefly web」を提供している。Adobe Firefly webでは執筆時点で「テキストから画像生成」「生成塗りつぶし」「テキスト効果」「生成再配色」が利用できる。

 阿部氏はFireflyの活用用途として、二つの例を挙げた。「代表的なのが、クリエイティブ作業での利用です。例えばPhotoshopでは、すでにFireflyの生成塗りつぶし機能によって、選択した領域を自然に塗りつぶせます。IllustratorではFireflyによる生成再配色によって、商品パッケージのカラーバリエーション見本を簡単に作れます。本来であれば膨大な作業が必要になっていたこれらの作業をアシスタントのようにFireflyが行うことで、クリエイターの手数を減らしてくれます」と阿部氏。

1.「眼鏡とエプロンを掛けた店長風の男性 白髪 髭」というプロンプトに、コンテンツタイプ「写真」を選択して生成された画像。非常にクオリティが高く、一見しただけでは実在の人物の写真と区別がつかないほどだ。
2.生成した画像の一つを選択し、編集メニューをクリックすると、「生成塗りつぶし」「似た画像を生成」「スタイル参照として使用」などが表示される。今回は生成塗りつぶしを選択した。
3.生成塗りつぶし機能もAdobe Firefly webで使える。ワンクリックで人物のみが切り抜かれたデータが生成された。通常人物を背景から切り抜く作業は非常に手間がかかる作業だが、それが一瞬で完了するのだから驚きだ。

画像生成AIが実現する
マーケティングの変革

 Fireflyの活用用途の二つ目に、阿部氏は「ビジネスシーン」を挙げる。「特に海外はWebの台頭によって、コンテンツの需要が急激に増えています、過去2年間においてコンテンツ需要の伸びは2倍になっており、今後2年間ではさらに5倍に増加することが見込まれています。この需要に応えるため、企業はコンテンツの制作プロセス自体を再構築することが必要です。Fireflyはこのコンテンツサプライチェーンの再構築を実現するツールとして有効です」と阿部氏。

 例えばスポーツ用品メーカーがテントのキャンペーン広告を打ちたい場合、従来であれば広告代理店などに外注して2週間ほどかけてバナー広告を制作していた。しかし、Adobe Express上のFireflyを活用すれば、学習させた自社の商品データを基に多様なバナー画像が簡単に生成できる。「この企業の製品画像データを学習させたカスタムモデルの生成は将来的に有償で提供する予定です」と阿部氏。サイズ違いなどのバリエーションも自動で生成でき、Web上やSNS、メールなどそれぞれに合わせたコンテンツを瞬時に生成し、キャンペーンを展開可能だ。

 また生成したコンテンツ上でどういった色や素材を使用したかといった情報に基づき、効果測定も行える。これまではページ単位やメールの開封率などから効果測定を行っていたが、今後は「Adobe Customer Journey Analytics」上で、コンテンツに応じた効果測定も行えるようになる。「例えば、このカラーパレットを使ったバナーは、この地域ですごくクリック率が高い、といったこれまで可視化できなかった情報を得られます。これらの情報から、さらに良い効果を得られるコンテンツを作るサイクルを回せます」と阿部氏は効果を語る。

 生成AIを語るときに上がるのが「AIが人の仕事を奪うのではないか」という懸念だ。それに対して阿部氏は「新しい技術が出てくると、『人の仕事がなくなる』という懸念が出てきます。しかしテクノロジーの発展で、市場規模は拡大し、人手不足が続いていくことは歴史が語っています。結論としては生成AIに仕事が奪われるということは100%ありません」と語る。一方で、その発想の元となる原因として、イラストレーターなどが自身の作風を生成AIに学習され、同じようなイラストが生成される事例を挙げた。アドビでは、そうしたクリエイターの権利を守る取り組みとして「コンテンツ認証イニシアチブ」(Content Authenticity Initiative=CAI)を推進している。CAIは、コンテンツに対して、作成者やコンテンツを作成したときに使用したアプリケーション、編集内容などの情報を付与することで、その透明性を担保するものだ。FireflyではAIによって作成、あるいは変更されたコンテンツに対して、生成AIが使用されたことを示す「コンテンツクレデンシャル」を自動で添付することで、そのコンテンツの出所を明確にする。またクリエイター側はこのCAIに「Do Not Train」とつけることで、作品をトレーニングデータセットの一部として使用することを防止できるのだという。

 アドビは10月10日に米国で開催されたクリエイターの祭典「Adobe MAX 2023」において、「Adobe Firefly Vector Model」によってテキストからベクター作成を行う機能(ベータ版)をPhotoshopに搭載したことや、「Adobe Firefly Design Model」によって、テキストからテンプレートを作成する機能(ベータ版)をExpressに搭載することなど、最新のAI技術を搭載したCreative Cloudの主要アップデートを発表している。またFireflyに関しては、これまでの画像生成モデルを「Adobe Firefly Image 1」と位置付け、新たに「Adobe Firefly Image 2 Model」にアップデートした。Image 2 Modelでは写真的表現や人物のレンダリング品質が向上している。またAdobe Firefly webのテキストから画像生成では、絞りやシャッタースピードといった写真設定や、ユーザーが指摘した画像のスタイルで画像を新規に生成する「生成Match」などが搭載された。アドビの生成AIに対する取り組みは、これからさらに加速していきそうだ。

教育現場での活用も進む生成AI

立命館は、アドビとの連携協定を結んだ同日、公開模擬授業としてAdobe ExpressのFirefly機能を活用した公開模擬授業を実施。学生たちは講師によるアドバイスを受けながら、将来の自分の姿を画像生成した。

 立命館は、2023年8月3日に日本マイクロソフトと、9月29日にアドビとそれぞれ連携・協力に関する協定書を締結している(共に日本時間)。立命館学園は2030年に向けた中期経営計画の基本となる考え方を示した学園ビジョン「R2030」を掲げており、その中でイノベーションや創発性人材を生み出す大学を目指すべき姿としている。日本マイクロソフトとアドビとの連携協定もそのビジョンの実現を目指したものだ。

 立命館と2社との連携協定の中で共通しているのが、生成AIへの取り組みだ。日本マイクロソフトとは、同社のAzure OpenAI Serviceなどを活用し、立命館オリジナル生成AI「R-AI」(仮称)を開発していく予定だ。またアドビとは新たな教育プログラムを共同開発するとともに、AIと3D、メタバースの世界、コロナ後の世界、生成AI系など、最新のテクノロジーや社会課題をテーマにしたセミナーやデジタルスキル育成のための講座などを展開していく方針であり、大学のみならず附属の小中高等学校の児童生徒に対してもデジタルクリエイティブ活動や発想力を育む機会を創出していく方針だ。

 学校現場での生成AIを活用するメリットについて、アドビの広報担当者は「探究型のプログラムにおいて、アウトプットの制作物はつきものですが、デジタルツール作業自体に時間を要したり、著作権がクリアになっていなかったりという課題があります。Adobe ExpressとAdobe Fireflyの組み合わせであれば直感的に使え、また権利に関してもクリアになっているため、日本の教育分野でも安心して使えます」とコメントした。

日常的にAIから恩恵を得られる世界へ
Everyday AIで企業のAI活用を浸透させる

グローバルで600社以上の導入実績を誇るAI/機械学習向けの統合プラットフォームを提供するDataiku。2013年にパリで創業し、現在はニューヨークに本社を構える。そんな同社は2021年に日本進出を果たし、翌年にDataiku Japanを設立した。日本市場に向けた展開に力を入れる同社に、企業におけるAI活用を促進させるポイントを伺った。

AI活用の民主化を実現するために
持続的に価値を生み出す運用体制を構築

Dataiku Japan
桂井良太

 Dataikuは「Everyday AI,Extraordinary People -日々のAIで、皆が一歩先へ-」をキーワードに、あらゆる組織と人が、日常的にAIから恩恵を得られるような世界を目指す企業だ。「Dataikuという社名は『Data』(データ)と『Haiku』(俳句)を組み合わせた言葉になっています。データプロジェクトに関わる組織や人にとって、データのモデル完成までのプロセスは、時には長くて複雑です。一方、俳句は五・七・五で表現するシンプルさが特長の詩です。複雑なデータのプロセスを俳句のようにシンプルにしたいという思いが込められています」と話すのは、Dataiku Japan マーケットデベロップメント ディレクター 桂井良太氏だ。

 Dataikuでは、社内の限られた部門だけではなく、あらゆる部門においてセルフサービスでデータを当たり前のように活用し、最適な意思決定を実現する「AI活用の民主化」を推進している。そのためには、AIモデルが実際に稼働する本番環境において、持続的に価値を生み出せるような運用体制が求められる。それを実現させるのが、同社が提供するAI/機械学習向けの統合プラットフォーム「Dataiku」である。

データ分析・機械学習の全てのプロセスを
一つのプラットフォームでカバー

 Dataikuは、データソースへの接続からデータの準備、AIや機械学習モデルの構築に加え、分析アプリケーションの開発と運用までを一つのソリューションとして統合させたオールインワンのAI・機械学習向けのプラットフォームだ。ソースデータへの接続、データ準備、モデル構築、可視化・共有、本番展開、運用監視といったデータ分析/機械学習の全プロセスを一つのプラットフォームで実行できる。

「エンドツーエンドを強調するツールやプラットフォームは数多く存在しますが、実際にはデータプロセスの一つまたは二つの処理にしか対応していない場合があります。そのため、それぞれの段階で別々のツールが必要となるケースがあり、コラボレーションに溝ができてしまう恐れがあります。Dataikuであれば、データの準備からモデルの開発、本番展開、そしてデータを可視化し消費するところまで全てエンドツーエンドで提供しますので、お客さまの負担もありません」と桂井氏は説明する。

 誰でも利用できる操作性の高さもDataikuの魅力だ。「フルコードはもちろんのこと、プログラムコードの知識がなくても使えるノーコード・ローコード開発にも対応しており、GUIによる直感的な操作で利用できます。これにより、データ分析に関して高い専門性を有するデータサイエンティストやデータエンジニアのみならず、ビジネスユーザーでもクリック操作だけでデータにアクセスして分析を進めたり、AIを業務に組み込んで活用したりすることが容易になります。企業内のさまざまな部門や社員が一つのプラットフォーム上で、日常的かつ容易にデータやAIにアクセスできるようになるため、組織全体で効率的なデータおよびAIの活用を実現することが可能です」(桂井氏)

AIの活用を促進させる
生成AIアプリケーションの共通基盤

 近年、多くの企業で注目を集めているのが生成AIだ。Dataikuでは、生成AIへの対応も行っている。その一つが「Generative AIユースケースコレクション」だ。企業における生成AIの活用を飛躍的に向上させるものとして、2023年6月にリリースされた。これは、生成AIの活用に関する共通のデザインパターンを確認し、そのパターンに基づく16からなる生成AIのユースケースを提案しているものだ。Generative AIユースケースコレクションにより、企業は生成AIの活用の幅を広げることができる。

 また、2023年9月には生成AIアプリケーションの共有基盤となる「LLMメッシュ」を発表した。LLMメッシュは、企業が大規模言語モデル(LLM)を使用して、効率的かつ安全なアプリケーションを構築するために必要なコンポーネントを提供する。LLMサービスプロバイダーとエンドユーザーアプリケーションの間に位置付けることで、最も費用対効果の高いモデルを選択、データとレスポンスの安全性を確保し、拡張可能なアプリケーション開発のためのコンポーネントを作成できる。

 LLMメッシュには、さまざまなAIの経路設定、AIサービスの安全なアクセスと監査、機密データのスクリーニングとレスポンスのモデレーションのための安全対策、パフォーマンスとコストの追跡などの機能が含まれている。また、アプリケーション開発のための標準コンポーネントを提供し、企業が期待するコントロールとパフォーマンスを実現しながら品質と一貫性を保つことが可能になる。

 生成AIをビジネスに活用していくに当たって、セキュリティリスクを不安視する企業も少なくない。「自社の情報が流出するのではないかといったリスクを懸念される声もあります。当社では、AIの潜在的なリスクに責任を持って取り組み、作成したAIが安全で信頼できるものであると保証するための基本原則を公表しています。Reliable(信頼性)、Accountable(説明の責任性)、Fair(公平性)、Transparent(透明性)の『RAFTフレームワーク』を掲げ、その実現をサポートするプラットフォームを提供しています」(桂井氏)

 今後もDataikuでは、あらゆる組織と人が、日常的にAIから恩恵を得られるような世界を目指し、製品強化に力を入れ、企業に大きな価値を提供していく。