Microsoft Copilotとライセンス体系

Microsoft Copilot(コパイロット)とは、OpenAIの大規模言語モデルGPT-4をMicrosoft製品で利用できるサービスである。無料で公開されているChatGPTは、GPT-3.5をベースにしているが、GPT-4はその上位バージョンで、有料であり、ChatGPT Plusなどを通じて利用する。Microsoftは、OpenAIの筆頭株主であり、GPTの利用に関して優先的な権利を持っているため、こうした高度なサービスを提供できる。

しかし、Microsoft CopilotとMicrosoft 365の関連、ライセンスは少々複雑だ。本書で対象としているのは企業向けバージョンのMicrosoft 365 Businessであり、家庭向けのMicrosoft 365 FamilyやMicrosoft 365 PersonalでのMicrosoft Copilot Pro利用は対象外だ。企業向けのMicrosoft 365 Businessでも、月額899円のBusiness BasicではWeb版とモバイル版のアプリしか使えず、パソコン上で動作するデスクトップ版は月額1,874円のBusiness Standard以上が必要である。さらにCopilot for Microsoft 365の利用には1ユーザーあたり年額53,964円が追加で必要となる。小規模企業にとっては高額だが、生産性向上や効率化が実現できれば、その価値はあるだろう。

生成AIを賢く使うためには

第1章と第2章では、Microsoft Copilotの紹介と導入について解説している。Web検索との違いやライセンス体系、セキュリティ、使用時の責任、プロンプトのテクニックなどが取り上げられている。Microsoft Copilotの応答に関しては、Microsoftは著作権を主張しないという。さらに「Microsoft Copilotの応答を利用したことが原因で起こされた訴訟では、Microsoftがユーザーを弁護し、和解金や賠償金を代わりに支払うことになっている」と、ユーザーに無用な負担をかけない制度が整っている。

「Microsoft Copilotを賢く使うための心得七箇条」では、次のような重要な心得が紹介されている。

1)「まずは使ってみる」マインドを大事にしよう
2)小さな成功体験を積み上げていこう
3)指示(プロンプト)はトライ&エラーで洗練させよう
4)人間の判断プロセスは必ず入れよう
5)相互に学ぶ姿勢を持とう
6)仕事のやり方を常に見直し、改良・改善し続けよう
7)人間らしい仕事にフォーカスしよう

これらの心得は、Microsoft Copilotに限らず、無料のChatGPTを含む様々な生成AIを利用する上でも有用だ。

Microsoft 365の主要アプリでMicrosoft Copilotをどう使うか

本書の大部分は、Teams、Outlook、PowerPoint、Word、Excel、OneNote、Whiteboard、Power Automateの各アプリケーションでのMicrosoft Copilotの活用方法に焦点を当てている。各ページには画面ショットが豊富に使用され、具体的な操作手順が詳しく解説されている。

Teams
テレビ会議アプリであるTeamsでは、Microsoft Copilotを使った文字起こしが紹介されている。テレビ会議で生成AIをどう使うのかと思っていたら、後処理で一番面倒な発言の文字起こしをやってくれるというのだ。

会議で議事録の作成は必須だが、非常に手間がかかる。会議中に発言を記録するとなると、記録者は発言する余裕などなく、会議に参加するのがほぼ不可能だし、後から録音・録画を元に文字起こしをするとなると会議の実時間の2倍、3倍の時間がかかる。専門業者に外注するには相当の費用が必要だ。TeamsとMicrosoft Copilotで文字起こしが使えるなら、一挙に実現できるので効率化が実現できる。

単純に文字起こしをするだけでなく、英語の翻訳、意見相違点の洗い出し、議論の穴の洗い出し、会議の要約作成、未解決の質問の洗い出しなど、生成AIはここまでできるのかといった活用法が列挙されている。会議の議事録作成において、発言を自動で文字起こしする機能は非常に便利だ。

Outlook
メールアプリのOutlookではMicrosoft Copilotを利用することでメールの下書き、メールの要約、返信メールの下書き、メールの添削、メールの英訳・翻訳などが紹介されている。

「メール本文のトーン」というメニューでは「率直」「ニュートラル」「カジュアル」「フォーマル」「詩的」から選ぶことができる。下書きの長さを「短い」「中」「長い」から選ぶことも可能だ。プロンプトで「退職する上司<人名>へ感謝の気持ちを伝えたい」と入力すれば、いきなりそれらしいメールが生成されるという。

メールの添削機能では文章のトーンや明瞭さ、受け手の感情などの観点で改善点を提案してくれる。お詫びのメールのはずが、かえって相手を怒らせてしまうような人にはすごく欲しい機能だろう。

PowerPoint
PowerPointのテンプレートを使って、Microsoft Copilotと対話しながらプレゼンテーションを作ることもできるが、Wordでプレゼンテーションの流れを作成しておき、それを読み込ませてPowerPointプレゼンテーションにするという方法もある。スライドの1枚単位に分かれてしまうPowerPointよりも長文作成に向いているWordで構造を決めておく方が構成をしっかり推敲できるのではないだろうか。

生成AIだからこその機能としては、スライドの内容にあった画像の自動生成がある。プロンプトで、「AI企業英語トレーニングマニュアル」と入力すればビジネスパーソンの写真が挿入される。「英語トレーニングのカリキュラム・中級クラス」というスライドに不適切な写真が使われている場合には、「この画像をよりスライドに合った画像に差し替える」と指示することで、自動的に教室らしい写真に差し替えられる。

Word
Wordでの活用法については、下書き作成、既存文書の修正、既存文書の理解といった基本的なものが列挙されている。ここで注目したいのが文書校正。Wordにはこれまでも「校閲」という機能があり、スペルチェックと文書校正を行うことができ、欧文のミスタイプや日本語の「てにをは」が怪しいところなどを指摘してくれたが、Microsoft Copilotを使うことで

・スタイルやトーンに一貫性があるかどうか
・句読点の使用が適切かどうか
・文法的に正しいかどうか

といった、これまでの校閲機能ではチェックできない問題点まで指摘してくれる。ビジネス文書にはふさわしくない俗っぽい話し言葉なども確認できる。誤字・ミスの多い文書を書いて恥ずかしい思いをしなくて済むだろう。

Excel
Excelでは、単純に関数の使い方を教えてくれるといったものだけでなく、用途に応じた数式の提案、基礎分析、複数のビジネス指標(KPI)提案などといった活用方法が紹介されている。たとえば、プロンプトで「マーケティングROIを見るための数式列の候補を表示して」と訊ねると「=[@収益]/[@予算]」という式が示される。

Excelの内部機能として一体化されているので、ポイントとなるセルを太字・赤字で強調する、といった操作も「1000円を超える予算について、文字を赤く太くして」とプロンプトを書くだけで一発で完了するのもうれしい。

本書はMicrosoft 365を導入している企業で、さらに効率的な活用を目指す担当者におすすめだ。Microsoft 365 FamilyやPersonalのユーザーは直接これらの機能を利用できないのは残念だが、他の生成AIでも活用できるアイデアが多数紹介されている。

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『Microsoft Copilot AI活用入門』(日経PC21 編/日経BP)

マイクロソフトが「Copilot(コパイロット)」と称するAI(人工知能)アシスタント機能を次々とリリースしています。Windows 11向けには「Copilot in Windows」、WordなどのOfficeアプリには「Copilot Pro」、そして企業向けには「Copilot for Microsoft 365」などなど、日々のパソコン活用や文書作成、ビジネス実務において“優秀なアシスタント”になるものばかりです。本書では、Windows 11に新搭載された「Copilot in Windows」をはじめ、誰でも無料で使えるウェブブラウザー上の「Copilot」、さらには有料版の「Copilot Pro」「Copilot for Microsoft 365」までを対象に、基本的な使い方から、ビジネスでの実践的な活用法まで、総ざらいで解説します。(Amazon内容解説より)

『図解ポケット 最新生成AIで時間短縮! Copilotがよくわかる本』(甲斐雄一郎 著/秀和システム)

Microsoftが開発した「Copilot」は、ビジネスシーンでの活用に特化したAIアシスタントです。Copilotは、企画書の作成から膨大な論文の要約まで、ビジネスの様々な場面で活躍しています。本書は、無料版のCopilotに焦点を当てて、その豊富な機能を仕事や日常へ役立てる活用アイデアを紹介します。導入方法から操作の手順、今すぐに使える定番の質問例、有料版CopilotとMicrosoft 365との連携など、あなたのビジネスに活かせるテクニックが満載です!(Amazon内容解説より)

『できるCopilot in Windows』(清水理史、できるシリーズ編集部 著/インプレス)

Windows 11に搭載されたAIアシスタント「Copilot in Windows」(以下、Copilot)の、基本から便利な使い方まで解説した一冊です。利用にあたっての注意点や、より精度の高い回答を得るためのコツも紹介しているので、はじめて生成AIを使う人にもおすすめ! 調べものや資料作成、アイデア出しなど、仕事や日常における様々な作業にCopilotを役立てる方法を掲載しています。さらに本書では有料の「Copilot Pro」についても解説。WordやExcelといったOfficeアプリでCopilotを活用する方法もわかります。(Amazon内容解説より)

『ChatGPT ビジネス活用アイディア事典』(イサヤマセイタ 著/SBクリエイティブ)

本書籍は、ChatGPTなどの言語生成モデルを利用したサービスを使いこなすための考え方とプロンプト例を、初心者にも分かりやすく解説しています。急速にビジネス現場に普及する生成AIの特性を正しく把握し、「少しでも早く仕事を終わらせたい」「作業が追い付かない」「自分一人では良い案が思いつかない」といった誰もが感じる悩みを解決するヒントを提供します。どのような業務を担当している方にも役立つように、基本的な活用事例と身近に感じられる活用事例を合わせて100パターン掲載しています。(Amazon内容解説より)

『60分でわかる! 生成AI ビジネス活用最前線』(上田雄登 著/技術評論社)

ChatGPTの公開で熱狂的ブームとなった生成AIも、ビジネスの現場やサービスへの実装フェーズに入りました。前半では生成AIを活用している金融やメディアなど業界別の事例や、人事や営業・マーケなど組織機能別の活用方法について紹介。中盤では、国内外のプレイヤーの取り組みや戦略を、「基盤開発」「基盤カスタマイズ」「基盤活用」3つのビジネスレイヤー別に解説します。後半では生成AIがもたらす組織や個人の変化、対話型や画像ばかりでなく動画や3D・音声などの事例や市場に与える影響、そして法整備や直面する課題についても言及。生成AIのビジネストピックを67項目にまとめた、ビジネスモデルや働き方の大きな変化まで一望できる1冊です。(Amazon内容解説より)