【特集】Windows Server 2025
Windows 10サポート終了を契機にファイルサーバーのリプレース提案でインフラを刷新

マイクロソフトは2024年1月に同社のサーバーOSであるWindows Serverの次期バージョンが「Windows Server 2025」になることを発表した。いよいよWindows Server 2025の正式リリースに向けて、ハードウェアメーカーも動き始めた。市場ではハイパーバイザーに関する課題が生じており、その選択に悩むユーザーが増えている。現行バージョンから大幅な進化を遂げたWindows Server 2025により、Hyper-Vが今後のハイパーバイザーの主役になると注目を集めている。

悩ましいハイパーバイザー選び
Hyper-Vに注目が集まる理由

日本マイクロソフト
マスタートレーナー
赤井 誠

 現在、多くの企業がサーバーに関する問題に直面している。それはハイパーバイザーを提供するベンダーの経営体制や製品戦略が変更され、運用中のハイパーバイザーの利用を継続すべきか、見直すべきか、見直すならばどれを選択すべきか、といった悩みだ。そもそもハイパーバイザーの選択肢にはそれぞれ一長一短があり、その選択はサーバー導入時の難問となっている。こうしたハイパーバイザー選びの難しさに一石を投じるのが「Windows Server 2025」だ。

 デル・テクノロジーズでPCサーバービジネスを担当する津村賢哉氏はWindows Server 2025に対して「Windows Server 2025は他社のサーバーOSが提供している機能を網羅的に実装しており、全ての機能がライセンスを追加購入することなく利用できる点で、Windows Server 2025のHyper-Vが今後のハイパーバイザーの選択肢において主役になるとみています」と期待している。

 Windows Server 2025の進化のポイントについて、日本マイクロソフトのマスタートレーナーを務める赤井 誠氏は「運用の効率化」と「小さなシステムでの高可用性の実現」、そして「PCとの連携」の三つを挙げている。

 Windows Server 2022ではセキュリティパッチをインストールする際に再起動が必要だが、Windows Server 2025では再起動が不要となる「ホットパッチ」が実装された。ホットパッチはAzureおよびAzure Stack HCI上のVM(仮想マシン)で稼働する「Windows Server 2022 Datacenter:Azure Edition」向けに提供しているが、Windows Server 2025ではオンプレミスの物理サーバー上のHyper-Vや他社ハイパーバイザーのVM、さらに他社クラウドのVMでも利用可能になった。

 赤井氏は「ホットパッチはセキュリティアップデートのみを対象としており、3カ月ごとに提供される更新プログラムのインストールの際は再起動が必要になりますが、ホットパッチによって最大3カ月間、脆弱性を放置せずに無停止で運用できるようになります」とホットパッチのメリットを説明する。さらに「ホットパッチはメモリー内のコードに対してパッチを適用するため、わずかな時間でインストールを完了できるメリットもあります」と話を続ける。

Active Directoryの大きな進化と
Windows 11と連携した機能強化

デル・テクノロジーズ
インフラストラクチャー・ソリューションズ
営業統括本部 製品本部
マイクロソフト
ソリューション部長
津村賢哉

 WindowsプラットフォームにおけるIDとアクセス制御の基盤サービスであるActive Directoryの進化もWindows Server 2025の大きなトピックだ。従来のActive Directoryのデータベースにはサイズに制約があった。Windows Server 2025ではActive Directoryのデータベースが拡張し、従来の制約を解消した。その結果、より多くのユーザーおよびIDが管理できるようになり、パフォーマンスも向上している。

 こうした進化の一方で、Active Directoryを利用しない環境での可用性やセキュリティも強化される。例えばワークグループサーバーでドメインを構成しなくてもフェールオーバークラスタリングが利用できるようになる。これによって中小企業や店舗および工場などの拠点で構成される小規模なシステムにおいても、高い可用性が実現可能だ。

 またActive Directoryで使用されているネットワーク認証方式の「Kerberos(ケルベロス)」が、Active Directoryを利用しないワークグループサーバーでの認証にも利用できるようになり、セキュリティが強化される。なお現在利用されているNTLM(New Technology LAN Manager)は非推奨となり、いずれ削除される予定だ。

 Windows Server 2025にはファイルサーバーのファイルアクセスの高速化と通信のセキュリティ強化を両立する「SMB over QUIC」というテクノロジーが実装される。SMB over QUICが利用できるのはWindows Server 2025とWindows 11の組み合わせのみで、その際にActive Directoryを使用していなくてもKerberosが利用でき、NTLM接続をブロックする。その結果、インターネット上でもVPNを用いることなく安全かつ高速にファイルサーバー上のファイルにアクセスできるようになる。

 このほかGPUのリソースを分割して複数のVMから利用できるようにする「GPUパーティショニング」など、Windows Server 2025には語り尽くせないほどの新機能の実装と機能強化が図られている。

デル・テクノロジーズでは「Dell PowerEdge サーバー」とHCI構成が可能な専用サーバーとなる「AX ノード」にAzure Stack HCI バージョン23H2のほか、Windows ServerによるHCI構成が可能なモデルをラインアップしている。
デル・テクノロジーズの「Dell PowerEdge サーバー」は日経コンピュータ(日経BP社刊)2024年9月5日号の誌上で発表された『顧客満足度調査 2024-2025』の「PCサーバー部門」において「信頼性」「運用性」「サポート」「性能・機能」「コスト」の全5評価項目の全てでトップのスコアを獲得し、1位に輝いた。

オンプレミスにビジネスチャンス
Windows 10 EOSに組み合わせて提案

 Windows Server 2025を採用したサーバー製品は2024年の年末からベンダー各社から順次発売されるとみられる。

 デル・テクノロジーズでは「Dell PowerEdge サーバー」とHCI(ハイパーコンバージド インフラストラクチャ)構成が可能な専用サーバーとなる「AX ノード」にAzure Stack HCI バージョン23H2のほか、Windows ServerによるHCI構成が可能なモデルをラインアップしており、前者は2024年12月より、後者は2025年の前半には次期Windows Serverに対応する見通しだ。