デジタルリスクサービス市場は77億円
Digital Risk Service
昨今、転職クチコミサイト、検索サイト、地図情報などに連動した企業プロフィールに対し、ネガティブな投稿を書き込むようなケースが増えており、メディアや手法の多様化が著しい。
MM総研は、SNSや掲示板上の風評・悪評をはじめ、事実か否かを問わず企業にとってネガティブな情報がWeb上に存在している状態を「デジタルリスク」と定義し、これを予防・対応するデジタルリスクサービスに該当するサービスの利用動向を調査した。
本調査では、このようなデジタルリスクに対処するサービスのうち、Web上のネガティブ情報を検知する「検知系サービス」、および「Search Engine Optimization」(SEO)対策など適切な情報を露出させてデジタルリスクの影響を軽減する「対策系サービス」の2種類に分類しその内訳や傾向を分析している。
2021年度のデジタルリスクサービスの市場規模は77.4億円で、前年度比15.0%拡大した。リスクの高まりとこれに対応するサービスの多様化を背景に、2024年度には139.2億円に拡大する予測だ。
デジタルリスクに備え、Webで情報発信を日常的に行っている企業へのデジタルリスク対策の実施状況も調査している。デジタルリスクの脅威を理解して何らかの対策を取る企業は、いまだ少数派なのが実態だ。実際に、現在の企業側のデジタルリスクへの取り組みとして、「対策を実施している」「過去に『炎上』などを経験しており、対策を徹底している」の合計は19.0%であった。一方、「何も実施していない」企業は58.0%で6割近くがデジタルリスクに対策をとっていない状況がみられた。
デジタルリスクへの知見を生かした提案を
一方で、デジタルリスク対策を実施済みの企業は、今後の支出額を増やす見通しだ。SNSや各種掲示板などで企業がデジタルリスクに晒される可能性が高まる中、経営に影響を与えた事例の増加に伴う対策への多様化がサービス利用者の支出拡大につながる。
デジタルリスクサービス未利用の企業が利用を検討したいサービスとしては、「企業研修」が42.6%、「デジタルリスクに対する社内体制構築支援」が26.1%、「企業法務支援・訴訟対応」が24.4%と回答が出ており、いずれもデジタルリスク発生の予防や事前の対策シミュレーションなどに関するサービスが多い傾向を示した。
上記を踏まえ、業務で培った検知・対策の知見を生かし、デジタルリスクの予防や発生時の事前準備などに役立つ情報提供や提案活動を推進することが重要だ。こうした視点が、検知系・対策系サービスに対する新規顧客の獲得につながる可能性を示唆しているとMM総研は分析した。
画像認識ソリューション市場は成長を持続
Deep learning
デロイト トーマツ ミック経済研究所は、AIの中のディープラーニング活用の画像認識ソリューション市場動向を調査した。
2021年度のディープラーニング活用の画像認識ソリューション全体の市場規模は、前年比139.4%の260億円だった。背景として、AIに過度な期待を抱くピークの時期を過ぎ、希望的視点から実際の業務課題解決に適用していこうとするフェーズに突入したことがある。例えば、ユーザーニーズが明確化したことで、業務課題に適合した業務アプリケーションの誕生や、「Proof of Concept」(PoC)を経て実運用に移行する案件が増加している状況が市場に影響を及ぼしている。また、ベンダー/ユーザー企業ともにニューノーマルな働き方に慣れてきたことや、前年度でも見られたPoCから本格稼働の進行、多拠点展開の更なる拡大、前年度の納期がずれ込んだ案件なども貢献し、大幅な伸び率となった。
AI画像認識ソリューション市場は、人間の目視業務の代替手段となることから、現在日本が抱えている「人手不足/働き方改革」や「高層ビル/社会インフラの老朽化の検査」の解決策としての活用が進んでいる。そのほか、「費用対効果の実証とユーザーの期待感向上」「新たな働き方/生活様式への順応」「経験効果」「AIエコシステムの構築」などの要因が市場を後押しするとみている。これを踏まえて、同市場は2022〜2026年度までに年平均成長率が33.4%増と成長を続け、2026年度には1,100億円に達する予測だ。
パブリッククラウドは高度活用の傾向
Public Cloud
IDC Japanは、国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表した。同調査によると、2022年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は、前年比29.8%増の2兆1,594億円となる見込みだ。
需要増加の理由にクラウドマイグレーションの際に対象とするシステム領域/ワークロードが急速に拡大している傾向が挙げられる。また、多くのユーザー企業が、クラウドの導入/利用促進から「高度活用」という新しい段階へと歩みを進めているとIDC Japanは分析する。高度活用は、コストの最適化や可用性の強化、生産性の向上などのIT/ビジネスの効率化をもたらす「改善」と、DX/データ駆動型ビジネスへと発展させる「変革」といった目的が含まれる。前述の目的を達成するためには、新しいツールの導入、新しい技術スキルの習得、企業文化や組織変革など、企業の多様な取り組みが求められており、課題も多く見られる。しかし、課題の改善策の検討に時間をかけず、まずはパブリッククラウドサービス活用への実行に移す企業が増加していることが市場成長を促した。
企業がクラウドの高度活用を進める中、IDC JapanのITサービスのリサーチディレクターである松本 聡氏はクラウドの支出に関するアカウンタビリティ(説明責任)の確立を目指す「FinOps」の傾向を次のように提唱している。「FinOpsは、ユーザー企業の企業文化や組織変革に影響を与えるため、ベンダーはツールを提供するだけではなく、組織/文化変革支援といったコンサルティングを組み合わせた支援体制の強化が求められています」