Apple
iPad Pro
DTP、映像製作、エンジニアリングまで
クリエイター垂ぜんの最新iPad Pro
初代iPadが登場したのは2010年。筆者も初代モデルを購入すべく、インターネットで深夜に注文した記憶がある。それから約12年を経て登場した最上位モデルが、12.9インチの「iPad Pro」だ。モニターサイズは12.9インチの大きさを確保。iPad Proとしての歴史では、第6世代になる。筆者が個人的に所有している初代iPad Pro 9.7インチと比較すると、隔世の感があるハイエンドモデルだが、iPad市場最高峰の魅力に迫ってみたい。
text by 森村恵一
iPadシリーズの最大の強みは歴史と互換性
最上位モデルのiPad Proについてレビューしていく前に、改めてiPadシリーズについて整理しておこう。Apple JapanのWebサイトにも詳しく掲載されているが、現在のiPadシリーズは、普及モデルの「iPad」や、性能、モニターサイズがアップしたiPad Proをはじめ、iPadよりも厚みが薄い「iPad Air」、軽量でコンパクトな「iPad mini」など大きく分けて5シリーズをラインアップ。その中でも、搭載しているチップは2種類に分かれる。iPad miniと第9および第10世代のiPadには、Appleが独自に開発したARMベースのSoCで、A13からA15まで展開している「Bionic」シリーズを採用していた。そして、iPad AirとiPad Proには、Macbookにも採用されているSoC「Apple M1」(以下、M1チップ)や「Apple M2」(以下、M2チップ)が搭載されている。
今回レビューするiPad Proは、最新のM2チップを搭載し、モニターはバックライトの代わりにミニLEDバックライトを搭載した「Liquid Retina XDR」を採用。高いコントラストと輝度を実現している。ProMotionテクノロジーとTrue Toneによる高精細で再現力の高いカラー表示が可能だ。また、背面のカメラは、12MP広角と10MPの広角カメラ、フロントにiPadでの顔認証を実現する「TrueDepth」の12MPの広角カメラを採用している。ストレージは最大で2TBまで選択できる。全体のサイズやカメラなどの仕様は、2021年に発売された第5世代と同様だ。
最大の進化は、M2チップの搭載にある。最新のM2チップは、四つの高性能コアと四つの高効率コアを搭載した8コアCPUと、10コアGPUに、16コアの機械学習処理システム「Neural Engine」などで構成している。メモリーの帯域幅は、100GB/sを実現している。M1とM2チップでは、どの程度性能差があるのか。ベンチマークサイト「Geekbench」では、第6世代iPad Proのシングルコア1872に対し、第5世代iPad Proは1704となっている。マルチコアでは、同8415に対し、同7205まで差をつけている。
見事なまでに、製品の世代に正比例した性能差が表れている。それだけ、iPadシリーズは確実な進化を続けている。この進化の歴史とシリーズの持つ互換性が、iPadの最大の強みでもある。
個人の生産性とクリエイティビティを拡大
iPad Proでは、2種類のキーボードと第2世代の「Apple Pencil」を別売りで提供している。2種類のうちの一つは「12.9インチiPad Pro(第6世代)用Magic Keyboard」で、iPad Proのカバーにもなる専用キーボード。フローティングカンチレバーという構造で、iPad Proをマグネットで取り付けて、柔軟に角度を調整できる。もう一つの「12.9インチiPad Pro(第6世代)用Smart Keyboard Folio」は、シンプルな構造のキーボードカバー。トラックパッドはなく、iPad Proは2段階の傾斜で固定する。持ち運びとタイピング中心の利用に適したキーボードになる。そして、第2世代のApple Pencilは、描画やメモ、PDFへの注釈といった用途に便利な専用ペン。iPad Proに磁力で装着でき、自動的に充電とペアリングが可能な優れモノだ。iPad Proのヘビーユーザーの中には、グラフィックデザイナーやイラストレーターといったクリエイターも多い。その多くは、ペンによる描画性能を高く評価している。大きく高精細な画面と反応の良いペン操作で、創造力を妨げないクリエイティビティを発揮できるのだ。
iPad Pro単体も、一般的な業務に十二分に役立つ機能を備える。例えば、アプリケーションとウィンドウを自動整理し、タスク間の切り替えを容易に行える「ステージマネージャ」は、マルチタスクなビジネスパーソンの資料添削やWebサイトの閲覧などをスムーズにする。12.9インチの一画面の中央に操作しているアプリケーションを、左端・縦向きに開いている複数のアプリケーションやウィンドウを表示するため、切り替えやすかった。
そのほか、AppleのビジネスアプリケーションをはじめWordやExcel、Googleドキュメントなどが利用できる点もビジネスシーンでのポイントが高い。クリエイティブ&エグゼクティブなハイエンドタブレットとして、第6世代のiPad Proは最高峰の1台だ。
タブレットのパイオニアとしての安定感と安心感
iPadシリーズがビジネス市場でも広く導入されている背景には、タブレット製品としての安定した性能、そしてシリーズ全体で統一された互換性がある。コロナ禍にあって、大手外食チェーンでタブレットによるオーダーシステムを導入するケースが急速に増えた。ファミリーレストランから回転ずしに至るまで、著名な外食チェーンの多くがiPadを使ったオーダーシステムを採用している。本シリーズが持つ互換性は、システム開発の場面も支える。例えば、開発部門のエンジニアが上位モデルのiPad Proなどで開発、検証したアプリケーションを、現場では普及モデルのiPadで展開できるのだ。こうした互換性と安定した製品供給が、本シリーズ全体の強みと言えるだろう。
システム開発という業務も、ある意味ではクリエイティビティが求められる職能だ。印刷やDTP、映像製作からエンジニアリングまで、ものづくりに携わるクリエイターを支えるハイエンドなタブレットとして、第6世代の最新iPad Proはまさに垂ぜんの1台なのだ。