デジタルツイン市場は成長段階

Digital Twin

 デロイト トーマツ ミック経済研究所はスマートファクトリー向けのデジタルツイン・ソリューション市場を調査した。デジタルツインとは、現実世界から収集したデータを用いて、仮想環境上に現実世界と同一の環境を再現するテクノロジーだ。同調査では、デジタルツイン・ソリューションを特定のITプロダクトではなく、Product Lifecycle Management(PLM)、IoT、AI、AR・VRなどを組み合わせた技術によって提供されるソリューションと定義している。そして、原理原則に基づく数値シミュレーションによる「物理モデル」、プロセスの運転データを機械学習などによって統計的に導出する「統計モデル」、物理モデルと統計モデルの組み合わせである「ハイブリッドモデル」の三つのモデルに分類して調査を行った。

 2021年の同市場規模は前年度比14.4%増の240億円で、2020年度の210憶円から増加傾向にある。モデル別で見ると、物理モデルが市場の過半数を超える66.9%を占め、161億円となった。すでに2,000億円を超えたPLM市場、兆円規模と推定されるIoT市場やAI市場と比べると、デジタルツイン・ソリューションの市場規模はまだ小さく、ようやく成長期に入った段階とデロイト トーマツ ミック経済研究所はみている。

今後の市場規模拡大は製造業のDXがカギ

 同調査では、デジタルツイン・ソリューション市場の今後の動向についても調査している。調査によると、2026年度の同市場規模は年平均成長率20.6%の615億円となる予測だ。

 市場規模拡大の要因として、製造業におけるDX推進を挙げている。製造業におけるデジタルツインの活用として例えば、デジタルツインを使用して実際に生産を開始する前に製造プロセスが適切に進行するかどうかを検証し、最適な生産方法を見つけ出すことが可能だ。さらに、運用段階での不具合の発生理由をデジタルツインで分析したり、設備の故障の予知もできる。一方で、デジタルツインの導入にはPoCレベルでも1,000万円以上の出費が必要とされるなどコストがかかる。コストに敏感な製造業の多くは導入に二の足を踏んでおり、現状デジタルツインを導入している企業は一部の超大手企業にとどまる。しかし、デジタルツインによる生産性向上やコスト削減効果が見えてくれば、DX拡大の時流に乗って一気に導入が進むとデロイト トーマツ ミック経済研究所は分析している。

出荷台数は前年の3分の2に縮小

Tablet

 MM総研は2022年の国内タブレット出荷台数を調査し、今後の動向予測を発表した。2022年の国内タブレット出荷台数は631万台と、前年比32.8%減となった。この結果は2010年以降の出荷としては4番目に少なく、2013年以降の10年間では最少を記録している。

 出荷台数が減少した要因として、2019年12月に文部科学省より打ち出された「GIGAスクール構想」による特需の一巡が大きいと同社は分析している。2020年、2021年と900万台以上の出荷が続いたGIGAスクール構想による特需は2021年3月には全国の小中学校への配備が完了しており、2021年4月から低水準の傾向だ。

 また、同調査では2022年のメーカー別出荷台数の内訳も出している。調査によると、過半数を維持したアップルが首位を獲得し、出荷台数シェア1位の記録を連続13年に伸ばした。しかし出荷台数は減少し、2013年以降の10年間で最少となった。減少の要因として、円安による価格改定の影響が大きい。「iPad mini」(2021年モデル)、「iPad Air」(2022年モデル)が7月と10月に値上げしたことや、物価高騰の影響で、人気の高いiPadも需要が低下したとみている。

 2023年の同市場についても、トレンドに変化がないことから大幅な回復は見込めない。しかし、GIGAスクール構想の次のステップ「Next GIGA」や、校内データを統合して教育面、業務面の双方向で活用する「スマートスクール」に注目が高まっている。加えて、2024年以降には買い替え需要によるV字回復も期待できるとMM総研は予測した。

ERP導入状況に合わせた提案が肝要

Enterprise Resource Planning

 ノークリサーチは中堅・中小企業のERPの導入状況を調査した。ERPを導入済みであり、現在のベンダーの製品/サービスを今後も利用する「導入済み:継続」は26.0%、導入済みだが、異なるベンダーの製品/サービスに変更を予定している「導入済み:変更」は8.5%、現在ERPを導入していないが、新規導入予定の「未導入:新規予定」が11.2%、導入しておらず、今後も導入予定はない「未導入:予定なし」が54.3%となった。すなわち、ERP導入済み企業の内4社に1社はリプレースを、ERP未導入の企業の内6社に1社は新規導入を見込める。そのため顧客の維持、拡大を図るためには、リプレース提案、リテンション提案、新規導入提案それぞれの成功が不可欠とノークリサーチは指摘している。

 しかし上記三つの提案を行う際には、留意すべき点がそれぞれ異なる。例えば、ERP導入済みで変更予定のユーザー企業が現時点で抱えるERP活用課題としては、海外展開、データ連携、スマートデバイス対応の機能不足といった回答が得られている。これを踏まえ、リプレース提案ではERP周辺の機能強化が求められる。一方、導入済みERPを継続するユーザー企業では、プログラミングが必要、自社業務の仕様に最適化できないことを課題に挙げている。そのため、既存顧客の他社への乗り換えを防ぐリテンション提案では、ERP本体の個別要件への対応力が重視されていると分析する。

 また新規導入提案では、ユーザー企業はモジュール間やクラウドサービスの組み合わせといった複数のシステムを連携したERPの構築を重視していると指摘する。しかし、さまざまなベンダー/事業者のシステムを組み合わせてERPを構築することは容易ではないため、多様なシステム連携の中心を担えるERP製品/サービスを訴求することがERP市場の現実解になると予想している。