校務環境のフルクラウド化実現を目指し
データバックアップサービスで安心を担保
宝塚市教育委員会
兵庫県南東部に位置する宝塚市は、南北に細長い市域を持つ自治体だ。市街地が広がる南部市街地と、豊かな自然に囲まれた北部田園地域から成る。こうした土地柄から、同市の大規模校は南部に位置しており、北部は学校数も少なく、小規模校が中心だ。2020年度末にGIGAスクール構想による1人1台端末の整備が完了し、2021年から本格的な端末運用をスタートした。そうした中で並行して進められたのが、校務ICT環境の効率化だ。
■宝塚市教育委員会
所在地:兵庫県宝塚市東洋町1番1号
教育長:五十嵐 孝 氏
施設数:小学校23校、中学校12校、特別支援学校1校
校務のクラウド化を推進
2020年度末に宝塚市で整備されたGIGAスクール端末。それらの端末は授業の中で積極的に活用されている。一方、教員側の校務用端末は学習者用端末と異なり、学習者用ネットワークに接続できないことから、授業で利用できなかった。そのため、教員は複数のステップを踏んで教材を学習者用端末に保存するなど、手間が生じていた。
そこで宝塚市では、2022年9月に校務用端末の刷新を行い、学習者用端末と同じようにタブレットとしても使えるコンバーチブルPCを校務用端末に採用。同時に、校務用と学習者用に分かれていたネットワークを統合し、校務用端末を職員室から教室に持って行けばスムーズに授業が行える環境を整えた。
こうした端末整備と並行して宝塚市が進めたのが、クラウドの活用だ。元々宝塚市では、教育委員会に設置されたセンターサーバーに各学校からアクセスする仕組みで運用していたが、2022年9月の校務用端末のリプレースと合わせて教職員用のライセンスとして「Microsoft 365 Education A5」を新たに導入したのだという。宝塚市教育委員会 学校教育部 教育支援室 教育研究課 課長・指導主事 山口直人氏は「こうした端末活用や、クラウド活用を円滑化するために、販売店のSkyさまご協力の下、有識者を招いた研修なども実施しました。文部科学省の指針に基づくセキュリティポリシーを策定した上で、校務用端末は自宅に持ち帰りができるようにするなど、クラウド活用を進めたことによって教員の柔軟な働き方が実現できています」と語る。
ポリシーに基づくデータ運用
こうしたクラウド活用が進む一方で、リスクとして心配されるのがデータの扱いだ。クラウドというとデータ消失のリスクは少ない印象を受けるかもしれないが、ユーザー自身のミスでデータを消去してしまい、それが復元できないといったトラブルも発生しやすい。そこで宝塚市教育委員会が導入したのが、「HYCU Protégé for O365」だ。
HYCU Protégé for O365は、Microsoft 365向けのデータ保護サービスで、「Exchange Online」「Microsoft OneDrive」「SharePoint Online」「Microsoft Teams」などのデータを一元的に保護できる。
「文部科学省の指針に基づくセキュリティポリシーを策定する際に、データ消失やランサムウェアへの対策が議題に上がりました。元々利用していたファイルサーバーのデータは200万~300万ファイルと非常に膨大で、それらのデータをクラウドに移行して保護する上で最適なサービスを探していました」と山口氏。クラウドサービスは可用性が高い一方で、データの消失まではカバーされていない。また、山口氏が指摘したように万が一ランサムウェアが侵入した場合、クラウド上のファイル全てが暗号化されてしまう可能性もある。こうしたトラブルに備えるためには、バックアップサービスの導入は不可欠なのだ。
HYCU Protégé for O365を同市に提案したSky ICTソリューション事業部 システムサポート部 技術サブチーフ 畑 皓之氏は「バックアップ用のストレージもサービスに組み込まれており、容量追加や管理の必要がない点がポイントでした。データは永久保存されるため、期間無制限で大容量のデータをバックアップできる点が宝塚市教育委員会さまの環境に最適だと考え、提案しました」と語る。また、バックアップ基盤の設計や構築、保守などの手間がなく運用できる点も、魅力的なポイントだと言う。
HYCU Protégé for O365を導入した効果について、それらの管理を担っている畑氏は「例えば先生方がデータを誤って削除したり、その削除したデータが何か分からなかったりしても、スムーズに復元が行えるようになりました。特にSharePointなどは、検索が十分に機能していないケースもあり、HYCU Protégé for O365上で検索することで速やかに目的のファイルを探し出すような活用もしています」と語る。
教員の安心につながるシステムに
Exchangeのメールがバックアップされているため、監査対応に活用できる点もメリットが大きい。山口氏は「生徒のメール機能は止めてありますが、教員と保護者間はメールでやりとりを行うため、そこで不適切な言動やトラブルが発生した場合でもHYCU Protégé for O365であれば後追いが可能です。万が一のトラブルに備えられるため安心できますね」と語る。
これらのバックアップデータは、教員が異動したり、退職してMicrosoft 365のライセンスが削除された後も残る。具体的にいつまでデータを残すか、といったポイントは今後議論していく予定だと言うが、当該教員が不在の状態でも必要なデータをサルベージできる環境があることは、業務上の安心感につながると言えるだろう。
宝塚市では今後、校務環境のフルクラウド化に向けてさらなるICT化を進めていく。山口氏は「単純に、『先生方がやっていた業務をICTでできるようにしました』というだけでは、苦手意識がある先生などはなかなかなじめません。宝塚市ではTeamsをフル活用し、校内会議や研修のペーパーレス化、学校を跨いだ教材の共有化を行い、『ICTを使うと業務が楽になる』と思ってもらえるように、支援を進めていきます」と語った。