契約書の電子化で庁内のDXを加速

新潟県三条市では、財務会計システムの導入やマイナンバーカードを用いた独自の市民サービスの提供など、さまざまなデジタル化の取り組みを行っている。そしてさらなる自治体のDX加速に向けて、デジタルツールの活用で庁内業務の改善に注力していく。その試みの一つが、電子契約サービスの導入だ。契約書の電子化が庁内業務にどのような効果をもたらすのか、話を聞いた。

民間事業者との契約もスムーズ

新潟県三条市
新潟県の中央部に位置する、人口約9万5,000人(2021年3月末時点)の工業都市。高温の金属を金型で叩いて形を整える、高度な鍛造技術を用いて作られた包丁や切り出し小刀、鉋などの「越後三条打刃物」は国の指定伝統的工芸品となっている。

 2020年11月、新潟県三条市の市長に滝沢 亮氏が就任した。滝沢氏が推進しているのが、自治体のDXに向けたデジタル技術の活用だ。その一環として、庁内業務の文書処理を電子化する計画を進めている。「庁内で文書処理をする場合、関係者に稟議書を提出して、役職を持つ職員がそれぞれ承認を行います。この承認プロセスでは、全員が閲覧するまでに時間がかかったり、誰が書類を所持しているのか把握できなかったりといった問題が生じており、紙による書類を電子化することでこの問題を解決できないかと検討を始めました」と話すのは三条市 総務部財務課 課長補佐の小林秀明氏だ。

 紙による書類のやりとりは庁外でも同様に発生する。工事や物品購入など民間事業者との契約には紙の契約書が用いられる。請求データの印刷や封入・封緘など相手先へ発送するまでの一連の作業に手間やコストがかかることや、契約締結までに時間がかかることなどが課題となっていた。そうした課題の解決やDXの促進のために三条市で導入したのが、GMOグローバルサイン・ホールディングスが提供する電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン」(旧:GMO電子印鑑Agree)だ。

「2021年1月29日に『地方自治法施行規則』が改正・施行され、自治体と民間事業者との契約締結で電子署名を用いる際の規制が緩和されたことも導入の決め手となりました。従来は、自治体と民間事業者とのやりとりに電子契約を用いる場合、地方自治法施行規則により、改ざん検知機能となりすまし防止機能を備えたものであることに加え、総務省令で定める電子証明書を用意する必要がありました。民間事業者側にも同様の証明書が必要となり、用意する相手にも負担がかかります。電子契約サービス導入のネックとなっていましたが、法改正により、そのハードルが下がりました」(小林氏)

契約締結までの時間を短縮

 電子印鑑GMOサインは契約の締結から管理までワンストップで行えるクラウド型の電子契約サービスだ。メールアドレスなどにより認証を行う「事業者署名型」(契約印タイプ)と、電子認証局による厳格な本人認証を行う「当事者署名型」(実印タイプ)の両タイプを組み合わせられるハイブリッド契約にも対応している。印章管理や法令適合性の担保を厳格に行える実印タイプで契約をしたいが、相手が実印タイプでの署名対応が難しいといった場合もある。そうした場合に、自分は実印タイプ、契約相手はメール認証による契約印タイプで署名を行うことで法令適合性・署名権限を担保しつつ、契約締結の作業をスムーズ進められる。

 三条市では2021年1月から実証実験を実施し、4月1日から本格的な導入を開始した。電子印鑑GMOサインの導入により、期待される効果は以下の通りだ。

・ 契約業務の時間を削減(印刷、製本、郵送、押印等の作業が不要)
・ 費用の削減(郵送代、封筒代が不要)
・ 契約締結までの時間を削減(郵送に係る時間が不要)
・ 契約相手側のコストを削減(印紙税が不要)

「遠方の事業者とのやりとりも多く、契約書を郵送して、相手から返答が届くまでに時間がかかっていましたが、電子印鑑GMOサインによってやりとりにかかっていた時間が大幅に短縮できました。印刷、押印、郵送などの作業が不要になったことも契約業務の時間短縮につながりました」(小林氏)

サポート体制も万全

 新しいシステムやサービスを導入すると、システムの利用方法に戸惑う職員も少なくない。三条市では独自の使用マニュアルを用意して、職員に利用方法を周知している。「電子印鑑GMOサインのUIは分かりやすく、数クリックで契約書の作成や送付ができてしまいます。職員からの問い合わせなどもなく、スムーズに運用できています」と小林氏は話す。また、GMOグローバルサイン・ホールディングス側でも、FAQやウェビナー、機能の使い方を紹介する動画など電子印鑑GMOサインに関するサポート体制を用意しており、トラブルが発生した時にも安心だという。

 三条市では、今後も庁内業務のDX促進に向けて取り組みを進めていく予定だという。「紙で管理している業務は、まだ数多くあります。行政文書の作成から保存、破棄までを一貫して管理する文書管理システムの整備など庁内の文書事務の電子化を進め、紙のデータを電子データとして扱えるようにしていくことで、業務の効率化を図っていきます。他部署間でのデータ共有などにも役立てられるでしょう」と小林氏は展望を語った。