今読むべき本はコレだ! おすすめビジネスブックレビュー - 第25回

「仕事のビジュアル化」が会議を速く楽しく盛り上げる!


『なんでも図解――絵心ゼロでもできる! 爆速アウトプット術』日高由美子/ダイヤモンド社

一所懸命説明したのに伝わらない。意見が欲しいのに盛り上がらない。誰でもわかる絶好のチャンスなのにゴーサインが出ない――会議でのコミュニケーションに戸惑いを感じている社会人はいますぐ図解スキルを磨くべし。難しく考える必要はない。丸と線さえ書けるなら1週間で身に付くスキルなのだ。

文/成田全


コミュニケーションを円滑にする“図解”

 長い時間会議をしたにもかかわらず、説明しているこちら側の真意が伝わらないまま、結局偉い人の一言で不本意な内容に決まってしまった、という経験がある方はいらっしゃるだろうか? あれだけ時間をかけて準備をしたのに、あれだけ念入りなプレゼン資料を作ったのに、あれだけわかりやすく説明したのに……いくら後悔しても費やした時間と労力は返ってこない。反省は次回に活かすしかない。

 しかしデジタルテクノロジーの発達によって、既存の業界の枠組みを超えて参入することが当たり前となった現代、いわゆる「破壊的イノベーター」や「ディスラプター」と呼ばれる企業の進出スピードは桁違いに速く、あっという間に業界地図が塗り替えられ、状況が一変してしまう。この変化への対応が一瞬でも遅れると、どんな大企業でも、また優良企業であっても、壊滅的な打撃を受けることになる。悠長に会議をやっている時間はないのだ。また最近ではウェブ会議も増えたことで、説明に「わかりやすさ」が求められる場面も増えている。

 そこで必要になってくるのが「図解による説明/確認/まとめ」のスキルだ。複雑になりがちなテキストでの説明を図で簡素化し、一瞬で頭に入るようにすることが相手とのコミュニケーションを円滑にする、というのが『なんでも図解――絵心ゼロでもできる! 爆速アウトプット術』だ。

丸と線が書ければOK!

 本書はある食品メーカーの総務部で(のんびりと)仕事をしていた田中大が、新規事業部に異動となり、部長から課題を突きつけられ、毎日繰り返されるミーティング、勉強会、ワークショップでてんてこ舞いになっていたところ、先輩がホワイトボードに図を書いて内容をまとめているのを目の当たりにして、図解のイロハを教える道場を主宰するえんま先生に弟子入りをするところから始まる。そこからは先生と生徒の対話形式で話が進んでいくため、とてもわかりやすい構成となっている。

 図解のメリットは5つあるという。

1. 複雑な内容や長い説明が俯瞰できる
2. 打ち合わせ、会議が盛り上がる
3. プレゼンテーションの精度が上がる
4. 想像力、発想力が上がる
5. 説明力がアップする

 パッと見てわかる図は、会議での抜けや漏れ、矛盾を見つけやすくなり、発言しやすい雰囲気作りに寄与して、プレゼンする側も、される側も行き違いなく理解ができ、ビジュアル化されることで思わぬ方向からの意見も飛び出すなど、いいことずくめになるそうだ。日々のアイディアや思いつき、キーワードを記録してストックするためにも、そしてブレインストーミングや知識のインプット、プレゼンでの伝達も図にすることは非常に有用という。

 また図といっても、本書で求められる画力は「丸と線が書ければOK」なので、必要な文字を書き、それらを○や□で囲み、→を引っ張ってつなぎ合わせ、スピーディーに図を完成させればいい。絵心のない方でも大丈夫だ。

4ステップ、1週間で基礎が身につく

 本書で伝授されるトレーニングは4つのステップ、1週間で身につくプログラムで構成されている。

ステップ1. 言葉を図に落とし込むための「基本パーツ」をインプット(1~3日目)
ステップ2. パーツを組み合わせ、文章を図解するコツをインプット(4日目)
ステップ3. 聞きながら図解するコツをインプット(5~6日目)
ステップ4. 現場を想定した「聞いて書く」ワークで、明日から使える力をインプット(7日目)

 キーワードをどのようにピックアップして、それを文字にしてどう配置し、何を○や□で囲み、何と何を→で結びつけるかをスピーディーに判断して書くため、先生から図のパターンや決まりごと、仕組みを体感する課題が与えられ、生徒はひたすら手を動かして身体に叩き込んでいく。上手く書く必要はなく、伝わるような図を書くことが求められるのだ。また見る人の理解がアップする図を書くためのコツも指導してくれる。とにかく「えんま先生の言う通りに手を動かし続けること」が上達の近道だ。

 加えて、与えられた文章を正しく理解した上で図解できているかをチェックできる問題もあるので、答えを見ずに自分の手で書くようにすると、さらに上達も早まるだろう。巻末にはおすすめの筆記具や、板書などをする際にひと目でわかるアイコン例(さすがに丸と線よりは高度だが)もあるので、トレーニングが終了した後も手元に置いて参考にしたい。

 デジタル化の対極であるアナログな「図解」は、厳しい環境を生き抜くためのイノベーションを生み出すための必須スキルとなりうるものだ。最近では手書き入力できるタブレットなども充実しているので、ますますその必要性は増すことだろう。図解への入口として機能してくれる本書で学び、新しいこと、面白いものをたくさん生み出していただきたい。

まだまだあります! 今月おすすめのビジネスブック

次のビジネスモデル、スマートな働き方、まだ見ぬ最新技術、etc... 今月ぜひとも押さえておきたい「おすすめビジネスブック」をスマートワーク総研がピックアップ!

『統計学わかりません!!』五十嵐中、佐條麻里 著/東京図書

ウイルス検査で陽性なら→「感染」確実? データのカラクリを見抜くには……? いまこそ「統計学」の出番です! 新聞・雑誌や論文には、統計データが、毎日次々と出てきます。それらをどのように読み解き、役立てればいいのでしょうか? 出てきた数字、示されたデータを正しく疑い、正しく読み取る(時には、役に立たないとダメ出しをする)。そのための道具が、「統計学」なのです。医療統計・薬剤経済でおなじみのあたる先生が、「ダマされない」ための術を紹介します。(Amazon内容紹介より)

『ファンベースなひとたち ファンと共に歩んだ企業10の成功ストーリー』佐藤尚之、津田匡保 著、おぐらなおみ 漫画/日経BP

ベストセラー『ファンベース』著者の佐藤尚之と、ネスレ日本でコーヒーのオフィス向け定期宅配サービス「ネスカフェ アンバサダー」を大成功に導いた津田匡保の共著による待望の書。漫画と対談でファンベースの実践ポイントを解説します。(Amazon内容紹介より)

『業務改善の問題地図~「で、どこから変える?」~進まない、続かない、だれトク改善ごっこ』沢渡あまね、元山文菜 著/技術評論社)

「働き方改革」「DX」などのキーワードをくしゃくしゃっと丸めて、人事部門や経営企画部門にマル投げする経営陣。「どうせ提案しても無駄」と現場はだれも本音を言わない。若手が提案しても「それはあなたの仕事じゃない」「儲からない」と中間管理職が一蹴。「RPAというのが流行っているらしい」とソリューションを導入してみるものの、まったく使えず、むしろ仕事が増えてしまう。改善しようとすると、「なんで今さら変えなきゃいけないの!?」と抵抗される。やる気はあっても、何をしたらいいかわからず、いつの間にか、なんとなく終息してしまう。古い仕事のやり方に固執し、いつまでたってもアップデートされない組織を、どう変えていけばいいか? 業務改善・オフィスコミュニケーション改善士として200を超える企業・官公庁・自治体の現場に携わってきた沢渡あまねと、業務改善、IT化支援、RPA導入を推進してきた元山文菜のタッグが教えます。(Amazon内容紹介より)

『世界一わかりやすいDX入門 GAFAな働き方を普通の日本の会社でやってみた。』(各務茂雄 著/東洋経済新報社)

DXの本質はデジタル技術と合理的なマネジメントの融合。実践する上で不可欠なのはGAFAな働き方。サブスクリプションサービスの立ち上げ、バックオフィスのデジタル化などに成功して、デジタルトランスフォーメーション(DX)に成功したと考えてはいけない。「デジタルビジネスの成功=DXの成功」ではないのである。DXは、社内外の仕事を、デジタル技術を活用して、その品質、スピードを最大にして、コストを下げた上で、コストパフォーマンスを最大にすることを目指す。その成果を成功の基準とするのが正しい。(Amazon内容紹介より)

『無駄な仕事が全部消える 超効率ハック――最小限の力で最大の成果を生み出す57のスイッチ』(羽田康祐 k_bird 著/フォレスト出版)

生産性の向上や働き方改革が叫ばれ、ワークライフバランスやメンタルヘルス、あるいは子育てことを考えると、自分の頭の中にあるスイッチを「仕事の量」から「仕事の質」へと転換する必要が出てきます。そして新型コロナウイルス騒動でリモートワークが一般化したことで、定性から定量へ大きくシフトしていく人事評価にも対応しなければなりません。著者はこれまで、外資系コンサルティングファームと広告代理店のハイブリッドキャリアを積んできました。前者からは合理的に物事を進める方法を、後者からはプランナーやクリエイターなど、多様な人材とプロジェクトを進める方法を学んできました。その中から、無駄な仕事を極限まで消し、成果を最大限にする「超効率ハック」を、【時間・段取り・コミュニケーション・資料作成・会議・学び・思考・発想】という8つのカテゴリに分けて57個解説します。(Amazon内容紹介より)

筆者プロフィール:成田全(ナリタタモツ)

1971年生まれ。大学卒業後、イベント制作、雑誌編集、漫画編集を経てフリー。インタビューや書評を中心に執筆。幅広いジャンルを横断した情報と知識を活かし、これまでに作家や芸能人、会社トップから一般人まで延べ1600人以上を取材。『誰かが私をきらいでも』(及川眠子/KKベストセラーズ)など書籍編集も担当。