「両利きの経営」を実践して社内でイノベーションを起こすコツ【後編】

前回は本企画のモデレーターを務めるフィラメントの角 勝氏も社外メンターとして参加している、NTTコミュニケーションズのイノベーションセンターの取り組みとして、社内新規ビジネスコンテスト「DigiCom」(デジコン)とビジネスアイデアを事業化する伴走型支援プログラム「BI Challenge」を紹介した。後編となる今回は、DigiCom発のビジネスアイデアをBI Challenge で事業化したNTT コミュニケーションズのサービスを紹介する。

アイデアを事業化した成功事例
コワーキングスペースの提供アプリ

株式会社フィラメント
代表取締役CEO
角 勝 氏

角氏(以下、敬称略)●DigiCom発のビジネスアイデアをBI Challengeで事業化した成功事例はたくさんありますが、その中でもユニークなサービスを紹介してください。

稲葉氏(以下、敬称略)●まずはハイブリッドワークで需要が高まっている「droppin」を紹介しましょう。2021年10月よりサービス提供しているdroppinは、コワーキングスペースを提供するスマートフォン向けアプリです。

 一般的にコワーキングスペースを利用するには予約が必要ですが、droppinでは利用予約だけではなく今すぐ使いたい、リモート会議をするので個室を使いたいといった個別のさまざまな要望に応えられるのが特長です。

 現在、全国360カ所以上のコワーキングスペースから条件に合った場所が利用でき、最近ではテレキューブさまと提携して、東名阪で160カ所以上のボックス型個室スペースも利用できるようになりました。

 droppinではコワーキングスペースの予約だけではなく、利用料金の決済まで行えます。droppinの利用には会員契約が必要となりますが、法人で契約すれば社員の利用料金を一括で決済できますし、自社のポリシーに応じて利用スペースの選択や利用時間などを制限したり、社員ごとの利用状況や課金状況を把握したりすることもできます。現在、法人向けに無料トライアルを実施していますので、ぜひ体験してみてください。

●当社でもdroppinを利用していますが、本当に便利です。出張先や外出先でコワーキングスペースを利用するには、まず検索サイトでどのようなサービスがどこにあるのかを確認して、よさそうなサービスを選んでそれぞれの事業者のWebサイトにアクセスし、そこでサービス内容や空き状況を確認するという手間がかかります。

 しかしdroppinを使えば複数のアプリやWebサイトの画面を行き来しなくても、一つのアプリでコワーキングスペースの検 索からサービス内容の比較、空き状況の確認、予約、さらに決済まで一気に完了できます。

 自分が今いる場所やこれから移動する場所で、ユーザーの要望に応じたコワーキングスペースが使いたいときにすぐに使えますので、いつも重宝しています。ハイブリッドワークが本格化していますので、これからのビジネスの成長が大いに期待できますね。

コミュニケーションしやすい文化の醸成
NTTコミュニケーションズの活動例

NTTコミュニケーションズ株式会社
執行役員 イノベーションセンター長
稲葉秀司 氏

●アイデアを事業化していくプロセスで大切なのが、最初に描いていたことが真実とは限らないことです。ユーザーインタビューをして最初に考えたアイデアが正解ではないことが分かっても、そのアイデアを捨てられず、執着するケースが多々あります。ユーザーの課題や要望と自身のアイデアが異なっていたら、そのアイデアを捨てて変えることが成功につなげるコツの一つです。

稲葉●正解ではないアイデアに執着するのは、本人が悩んでいるときにほかの人の意見や情報が入ってこないからです。相談しやすくするカルチャーを作ることも大切です。

 例えば私の組織には「生煮え企画ランチ会」という会があります。これはランチを取りながら漠然としたアイデアや軽い悩み事などを直接私に相談できる場です。エントリーの際に公開・非公開が選べ、公開であれば他部門の方が入っても構わないとしており、実際により多くの視点が入って議論されることで、私がとやかく言わなくても漠然としたアイデアに具体的な方向性が見えてきたり、個人的な視点の意見や悩みが組織の改善につながったりします。

 議題は漠然や軽いといった「生煮え」であることが大切で、早い段階で意見交換することでアイデアの軌道修正がしやすく、問題が大きくなる前に解決できるなどの効果があります。ただし私の回答も生煮えですが。

●コミュニケーションの量を増やすことが、企業や組織の活性にそのままつながります。社内のコミュニケーションはあればあるほど良い効果が生まれます。

コミュニケーションしやすい文化の醸成
NTTコミュニケーションズの活動例

コワーキングスペースを提供するスマートフォン向けアプリ「droppin」はDigiCom発のビジネスアイデアで、BI Challengeで事業化した成功事例の一つ。

●アイデアを事業化していくプロセスで大切なのが、最初に描いていたことが真実とは限らないことです。ユーザーインタビューをして最初に考えたアイデアが正解ではないことが分かっても、そのアイデアを捨てられず、執着するケースが多々あります。ユーザーの課題や要望と自身のアイデアが異なっていたら、そのアイデアを捨てて変えることが成功につなげるコツの一つです。

稲葉●正解ではないアイデアに執着するのは、本人が悩んでいるときにほかの人の意見や情報が入ってこないからです。相談しやすくするカルチャーを作ることも大切です。

 例えば私の組織には「生煮え企画ランチ会」という会があります。これはランチを取りながら漠然としたアイデアや軽い悩み事などを直接私に相談できる場です。エントリーの際に公開・非公開が選べ、公開であれば他部門の方が入っても構わないとしており、実際により多くの視点が入って議論されることで、私がとやかく言わなくても漠然としたアイデアに具体的な方向性が見えてきたり、個人的な視点の意見や悩みが組織の改善につながったりします。

 議題は漠然や軽いといった「生煮え」であることが大切で、早い段階で意見交換することでアイデアの軌道修正がしやすく、問題が大きくなる前に解決できるなどの効果があります。ただし私の回答も生煮えですが。

●コミュニケーションの量を増やすことが、企業や組織の活性にそのままつながります。社内のコミュニケーションはあればあるほど良い効果が生まれます。