三位一体の連携で設計・製図業務をサポート
DWG互換のニーズに応えた汎用性の高いCAD

「ARES Commander」Graebert Japan

製造、建築、土木といったものづくりの現場において欠かせないツールがCADソフトウェアだ。平面情報で図面を表現する2D CADをはじめ、三次元空間を利用して立体的な図面を表現する3D CADや建築設計向けのBuilding Information Modeling(BIM)など、設計や製図が求められるさまざまな業界で利用されている。CADソフトウェアの「ARES Commander」を提供し、大手ゼネコンや建設関連企業など数千社での導入実績を持つGraebert JapanにCAD市場の現状などについて話を伺った。

低価格・導入のしやすさが鍵を握る
テレワーク用途への対応も必須要件

代表顧問
江端陽二氏

 ドイツでCADソフトウェアの開発を手掛けるGraebert。1994年、同社が開発したのが、オートデスクが策定する設計ファイルの形式「DWG」と互換性を持つCADエンジン「ARES CAD」である。ARES CADは、世界各国のCADベンダーに採用され、800万以上の利用者がいる。GraebertはカスタムCADエンジン提供企業として急成長を遂げ、2010年にはWindows、Mac、LinuxのOS上で同時に利用可能となる汎用CADソフトウェア「ARES Commander」をリリースした。

 ARES Commanderの国内での展開は、2013年にGraebertのCADエンジンを使用した「JDraf」というブランド名のOEM製品から始まった。

 JDrafはARES Commanderに搭載されている3D機能などを削ることで、低コストでの提供を実現させた国内市場向けの製品である。2017年には、日本でのDWG互換CAD事業のさらなる強化を図るため、GraebertはJDrafをARESブランドとして統合し、JDrafの後継バージョンとなる「ARES Standard」と海外と同一仕様の「ARES Commander」の2種類のラインアップで提供をスタートさせた。

「日本市場では2D CAD、3D CADを含め低価格なCADソフトウェアが求められています。複雑な設計やシミュレーション機能などを使って詳細な解析ができる高価格なハイエンドのCADソフトウェアの導入が進む一方で、ミッドレンジやローエンドといった低価格なCADソフトウェアが提供されるようになり、今や一部の設計従事者が利用する特別なツールではなく、身近なツールとなっています。低価格でありながら、取引先が使用するCADソフトウェアとの互換性があり、受け取ったファイルの閲覧や編集ができるCADソフトウェアの需要が高まっています」とGraebert Japan 代表顧問 江端陽二氏は国内のCAD市場について話す。

 コロナ禍でのテレワークの実施に伴い、オフィス以外の環境においてもCADソフトウェアの継続利用を求める企業も増えているという。こうしたニーズを満たす製品としてGraebert Japanが提案するのが、ARES Commanderだ。

クラウド利用で簡単に情報共有
ユーザーの声を基に利便性向上

営業部 本部長
村井幸八氏

 ARES Commanderは、DWGファイルの作成、閲覧、編集、印刷に必要なCAD機能を備えたDWG互換CADソフトウェアだ。作図領域で数値入力できる「クイック入力」、ふぞろいのオブジェクトをエッジに合わせてカットする「トリム」、等間隔で寸法線を配置する「寸法スナップ」などの2D製図機能や3Dソリッドモデル作成や幾何/寸法拘束といった3D CAD機能を搭載している。

 スマートフォン、タブレットでCADデータの閲覧や編集が行えるモバイル版のアプリケーション「ARES Touch」やWebブラウザーから直接CADデータの作成、共有、編集に対応したクラウド版の「ARES Kudo」も利用可能だ。ARES Touchを使用すれば、CADデータに写真の添付、注釈、コメントなどをスマートフォンやタブレットから気軽に書き込める。ARES Kudoでは、クラウドへ保存したCADデータに対して「表示専用リンク」というURLを作成すれば、URLを共有した相手とCADデータの共有が容易になる。図面を修正すれば自動で最新のデータが同期されるため、データ共有のし忘れや大量のデータで最新版が分からなくなるといった事態も防げる。

「ARES Commanderは、デスクトップ版・モバイル版・クラウド版の三つの環境を連携できる『Trinity』(三位一体)がコンセプトです。働き方改革やコロナ禍によって多様化する働き方に合わせて柔軟に対応できます」と営業部 本部長 村井幸八氏は特長をアピールする。

 DWG互換CADソフトウェアとしてオートデスクの「AutoCAD」との互換性の高さや、保有する特許や著作権を法的に調べるリーガルチェックもクリアしている点なども安心して利用できるポイントと言える。ほかにも、SXFファイル/JWWファイルへの対応や三斜求積といった日本独自の構造設計向けの拡張ツール「JTools」も提供する。「日本のお客さまの要望を取り入れ、開発に反映させることで利便性の向上に努めています。ARES CommanderはAutoCADの代替製品としての位置付けではなく、安心・安全・安価であり高機能・汎用性を兼ね備えた魅力的な製品です」(江端氏)

製造業向けラインアップを追加
DWG互換CADの販促拡大を目指す

 昨今、CADソフトウェアのライセンス体系を永久ライセンスからサブスクリプションへ移行するCADベンダーが増えている。製品の導入にかかる初期費用を抑え、使用期間を必要に応じて選べるようにすることでユーザーの利便性向上を図る狙いがある。一方で、CADソフトを利用する企業の中には、コストや運用面の観点から永久ライセンスを求める声も少なくない。

「ARES Commanderは期間に制限のない永久ライセンス+1年間のアップデートとEメールサポートをサブスクリプションとセットにしたライセンスや、1年間のサブスクリプションライセンスなどさまざまなプランを設けています。お客さまのニーズに合わせて最適なプランを提案できます」と村井氏は説明する。

 現在、ARES Commanderは大手ゼネコンや設計事務所、建設関連企業が主なユーザーだ。今後はさらに製造業に向けた販促を積極的に行っていくという。

「今春には製造業に向けたARES Commanderの2D/3D DWG編集機能と機械製図機能を備えた新製品『ARES Mechanical』をリリースする予定です。販売パートナーさまにとって販路の拡大に貢献できる製品だと言えるでしょう。ARES Commanderは、首都圏での採用実績を作ってきましたが、地方への展開はこれからです。全国の販売パートナーさまへのプロモーションや教育などの啓蒙活動を行い、ARES製品を知っていただき、共にビジネスの拡大を加速させたいと考えています」と最後に江端氏は意気込みを語った。