電子サインで実現する非接触の入学手続き
-Legal Tech- 立命館アジア太平洋大学
新型コロナウイルスの世界的な流行で、多くの都市がロックダウンされた。その影響は、留学生を多く受け入れる日本国内の大学にも生じている。推薦状や入学書類のやりとりができなくなっているのだ。
コロナ禍で生じた契約書類への問題
大分県別府市に位置する立命館アジア太平洋大学(以下、APU)は、立命館が2000年4月に設立した国際大学だ。学生約6,000名のうち約半数は90カ国・地域からの留学生であり、教員も約半数は外国籍だという。
そうした留学生の受け入れを積極的に行っているAPUが、2020年の年明けから見舞われたのが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大だ。開学以来155の国と地域からの留学生を受け入れているAPUだが、その留学生からの出願や入学手続き書類の原本の一部は海外郵送での提出を求めていた。しかし、コロナ禍において多くの国と地域で主要都市が封鎖され、大学から送られてくる推薦状などの所定書類を受け取れないといった問題が発生していた。
APUの垰口広和氏は「特に留学生を多く受け入れている本校では、こうした契約書類に生じる課題にいち早く対応していく必要がありました」と語る。そこでAPUが導入したのが、アドビの電子サインソリューション「Adobe Sign」だ。国内の教育機関では初の導入となる。
導入のきっかけはアドビからの製品紹介があったことだった。また多言語対応である点や、アドビのブランド力が高く、留学生への説明がしやすい点なども選定の理由として挙げられた。
安全で迅速な書類のやりとり
導入検討をスタートしたのは2020年4月だったが、迅速に承認が進められ、運用プロセスの整理整頓から留学生への周知も実施し、7月には実際に稼働が始まった。最初に使い始めたのは年間を通して受け付けている留学生からの出願だ。
垰口氏は「ベトナムやタイではロックダウンで学生が教員に会えず、推薦書などの書類が提出できない状況でした。そこでアドミッションズオフィス(国際入学試験事務局)がAdobe Signで発行した推薦書のリンクを出願用Webサイトに記載し、留学生から教員にそのリンクを共有してもらって必要事項を記入してもらいます。提出されたら大学に直接データが届くため、コロナ禍においても安全かつ迅速に推薦書類のやりとりが行えます」と語る。
また、APUでは9月入学の学生もおり、それらの入学手続き書類もAdobe Signで受け取れるようにした。「大きな効果として、郵送費が目に見える形で削減されました。学生に送付する作業もなくなったため、Adobe Signの費用対効果は非常に大きいですね」と垰口氏。現在入試部門での使用が一段落したため、ほかの部門でのAdobe Signの活用も検討されている。今後もAPUでは、Adobe Signを含めたさまざまなITサービスを活用し、ニューノーマル時代の新たな教育現場の改革に取り組んでいく。
法的有効性が担保された電子サインで契約をペーパーレスに
-Legal Tech- アドビ
Adobe Sign
見積書や請求書など、ビジネスシーンにおいて押印が必要となる書類は数多い。そうした書類から住宅ローン契約まで、幅広い契約書類の電子化を実現するのが、アドビの「Adobe Sign」だ。
紙書類がテレワーク推進の障壁
「コロナ禍において、国内外を問わず多くの企業でテレワークが実施されました。しかし、テレワークを継続する上で、既存の業務スタイルには大きな課題があります。それは紙の書類への対応です」と指摘するのは、アドビ カスタマーソリューションズ統括本部 デジタルメディア カスタマーサクセスマネジメント本部 カスタマーサクセスマネージャー 中島 萌氏。
アドビでは2020年2月10日~17日にかけて、東京都内に勤務し、過去3カ月以内にテレワーク勤務をしたことがあるビジネスパーソン500人にインターネット調査を行い「テレワーク勤務のメリットや課題に関する調査結果」として発表している。その中では、テレワークを体験したビジネスパーソンの86.4%が業務の生産性が上がったと回答している半面、テレワークで働いている際に紙書類への捺印などの対応処理のためやむなく出社した経験があると回答した人は64.2%に上るなど、紙書類の管理がテレワーク推進の大きな障壁となっていることが浮き彫りとなった。
「紙書類のデジタル化は、どの企業にとっても喫緊の課題になっています。特に立命館アジア太平洋大学(以下、APU)さまのように海外とのやりとりの多い企業などは、紙文書の郵送ができなくなっており、署名や承認が得られない事態にも発展しています」(中島氏)
署名者の真正性を担保する
そうしたテレワークに生じている紙業務の課題解決に有効なのが、アドビの電子サインソリューション「Adobe Sign」だ。Adobe SignはPDFおよび電子サインソリューション「Adobe Document Cloud」の中核サービスだ。PCだけでなくスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスからも電子サインが行えるクラウド製品で、場所を選ばずに承認が可能だ。
Adobe Signの魅力はシンプルな使いやすさにある。署名・承認を依頼する側が必要な文書をPDF形式でアップロードすると、署名・承認をする側に文書へのリンクが記載された通知メールが届く。そのリンクをクリックするとWebブラウザーが開き、クラウド上で署名できる。文書はAES256で暗号化されているほか、全ての作業がクラウド上で完結するため、署名プロセスの追跡や記録、制御が可能だ。文書に応じて、最適な署名オプションの選択が可能で、文書が署名者によって開かれる前にパスワードやソーシャルID、電話による認証などの認証方式を使って署名者の真正性を検証する電子サインや、証明書ベースのデジタルIDと暗号番号が使用される電子署名などによって、署名者の真正性を担保できる。
セキュリティ面も安心だ。Adobe Signの署名文書をやりとりするクラウドは、日本の国内データセンターに保存されるため国外に文書データが保存される懸念がない。また、各地域や業界のセキュリティ標準に数多く準拠しているため、海外に拠点を持つ企業でもセキュリティの懸念なく使用できる。
「特に海外展開をしている企業では、Adobe Signの多言語対応が大きな強みとなります。サポートも英語で対応できるため、署名者が海外のスタッフでも安心です」と中島氏。
多様な業種業界での活用が進む
金融業や不動産業での導入事例もある。例えば金融業のソニー銀行では、住宅ローンの借り入れ契約をAdobe Signを活用して実施している。従来の紙ベースの契約の場合は、一つの契約締結までに約2週間かかっていたが、Adobe Signを導入したことで即日の契約締結が可能になった。また、不動産業のアットホームでは、従来紙ベースで行われてきた契約更新を電子化・簡略化するためにAdobe Signを基盤にしたサービス「スマート契約」を開発。多くの不動産業者に導入され、契約業務の電子化が段階的に進められている。
コロナ禍において、Adobe Signの利用率に変化はあったのだろうか。中島氏は「ユーザーは非常に増えました。これまでは部門ごとに検討されていた文書の電子化が、企業全体で取り組まなければいけないテーマに変化しています。実際2020年の2~3月で非常に引き合いが増え、業種を問わず導入されています。会社に出社しなければ処理ができない法務や経理の文書を、在宅勤務環境下でも処理できるようにしたいという共通したニーズが強くあります」と語る。
また、APUの導入事例を公開したことにより、教育現場からの反響も多くあったという。「私学の大学からももちろんながら、国公立大学からも問い合わせがありました。国公立大学の場合は海外との共同開発や研究における文書のやりとりが必要となっており、コロナ禍で海外に行けない現在、Adobe Signを活用してそのやりとりを簡素化できないかと検討されている大学があります」(中島氏)
今後もアドビでは、業種や業界を問わず進むペーパーレス化への支援を進めていく。