今読むべき本はコレだ! おすすめビジネスブックレビュー 第28回
改革の近道は効率ハックで「考える時間を作る」こと
『無駄な仕事が全部消える 超効率ハック 最小限の力で最大の成果を生み出す57のスイッチ』羽田康祐/フォレスト出版
コロナ禍以降、日本社会は否応なくイノベーションを求められている。とはいえ、大半の社会人は目の前の仕事に追われ、改革を口にする暇さえないのが実情だ。ならば最初の一歩は「じっくり改革について考えられる時間を作ること」から。今回紹介する一冊はその助力になり得るだろう。
文/成田全
無駄な仕事、していませんか?
「効率化」という言葉を聞くと、拒否反応を示される場面は案外と多い。しかし「楽をせず、額に汗して働け」という旧態依然とした日本的な考え方は、すでに21世紀の5分の1が終わった今、完全に捨て去っていただきたい。
もちろん日々の地道な仕事は大切だ。しかしテクノロジーを使うことでミスなく、処理速度を飛躍的にアップさせられる現代、わざわざひと昔もふた昔も前の苦労をする必要は一切ない。計算をするのに手計算やそろばんを使うという方はほとんどいないと思うが、まだ電卓はよく使われている。しかし表計算ソフトに簡単なプログラムを組み込めば、数字を押し間違う危険性の高い電卓はほとんど必要なくなる。
こうした効率化や生産性を高めることは「ライフハック」と呼ばれる。
ライフハック lifehack(ハック「hack」はうまくやる意)……効率性や生産性を高められる生活術や仕事術。主にネット上で用いられる表現。(『大辞泉』より)
しかしDX(デジタルトランスフォーメーション)などによる効率化以前の部分で「ハック」が必要な人は案外と多い、というのも事実だ。
不意に頼まれる仕事、浮かばないアイデア、終わらない作業、インプットやアウトプットのミスマッチによる時間のロス……こうした日々積み重なっていく「無駄な仕事」がなくなれば、飛躍的に生産性が上がり、効率化が望める。その指南をしてくれるのが『無駄な仕事が全部消える 超効率ハック 最小限の力で最大の成果を生み出す57のスイッチ』だ。
努力しなくてもすむ工夫を
本書には外資系コンサルティングファームと広告代理店に勤務した経験を持つ筆者である羽田氏が、合理的に物事を進め、多様な人材とプロジェクトを推進してきた経験から編み出された「超効率ハック」が57個詰め込まれている。
羽田氏は「まえがき」で「『生産性の低さを努力でカバーする』ことは許されない時代になっています」と書き、「努力すること」以上に「努力しなくてもすむ工夫」が働く人たちに求められていることであり、量から質へと転換すべきだと断言している。また超面倒くさがりの同僚がおり、その人が「面倒くさいこと」が大嫌いだからこそ、それをモチベーションに「無駄な作業」をなくす工夫をして生産性を高めている、とまるで瓢箪から駒が出るようなことを書いている。
そのためには、頭のスイッチを切り替えるだけでOKというのだ。
なんだか騙されているような気分になる方もいらっしゃるかもしれないが、これが「超効率ハック」の考え方だ。今の状況を分析して、何が大事なのか、無駄なことは何かを取捨選択して問題点を挙げ、どうしたらクリアできるのか、いかに楽ができるのかを突き詰めて、これまでと視点を変え、パチンとスイッチを切り替える――そのための57の技が、コンパクトにまとめられているのだ。
生産性が上がる、8つのジャンルの仕事の進め方
全8章で構成された本書は、すべての章タイトルが「●●」の生産性を上げる、となっていて、この●●に入るのが「時間」「段取り」「コミュニケーション」「資料作成」「会議」「学び」「思考」「発想」という8つのジャンルの仕事だ。
例えば「第6章『学び』の生産性を上げる hack38/消費の読書→投資の読書」では、知識を得るための読書ではなく、思考を巡らせて見解を生み出すための読書法が書かれている。単に本を読んで得ただけの知識はやがて古くなる(最新情報ほどすぐ古くなるし、古典などはそもそも古い知識である)が、得た知識をどう活かすのか、本に対してどう向き合っていくべきなのかといったことが、わずか5ページでまとめられている。読んだ自分が「なるほどねぇ」と思うだけの“時間を無駄にする読書”から、得た知識を取り込んで自分なりに加工し、別の知識と結びつけて提示して、誰かに「なるほどねぇ」と思わせる“未来志向の読書”になれば、もう頭のスイッチの切り替えは完了だ。
ひとつひとつのハックは3~8ページにまとめられており、自分が知りたい項目を短い時間で読むことができる。自分ができていること、できていないことを項目ごとにチェックしながら、超効率ハックを身につけ、さらにデジタルツールを取り入れて自動化できる仕事は自動化してしまえば、もう身の回りには無駄な仕事は一切なくなる。するとあなたには、考える時間がたっぷりと確保されるのだ。
あなたの周囲を見渡してみてほしい。普段使っているものは、どこかの誰かが「今よりもちょっと便利にして、楽をしよう」と生み出したものばかりだ。パソコンも、スマホも、タブレットも、テレビも、電話も、車も、電車も、飛行機も、靴も、メガネも、洋服も、包丁も、ガスコンロも、インスタント食品も、何もかもが生活を「楽」にするためのものだ。そうした新しいものが生み出せる人になれる思考のヒントを、ぜひ本書で会得してもらいたい。
まだまだあります! 今月おすすめのビジネスブック
次のビジネスモデル、スマートな働き方、まだ見ぬ最新技術、etc... 今月ぜひとも押さえておきたい「おすすめビジネスブック」をスマートワーク総研がピックアップ!
『プロとして使うZoom [決定版] 会社では教えてくれない新時代の仕事術』平田幸一 著/インプレス
本書は、Web会議ツールの代表格であるZoomを使って「リアル以上のビジネス成果」を出すために、「Zoomの使いこなしテクニック」と「オンライン環境下でのビジネスノウハウ」を1冊にまとめた解説書です。会議やプレゼン、商談、提案営業、ウェビナーの講師など、オンライン環境でのビジネス活動が求められる仕事は多岐にわたります。会社では誰も教えてくれない、ニューノーマル時代に必須の「Zoomを活用した仕事術」が満載の1冊です。(Amazon内容紹介より)
『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』ピーター・ディアマンディス、スティーブン・コトラー 著、土方奈美 訳/NewsPicksパブリッシング
イーロン・マスクの盟友が「この先10年の未来」を全方位ガイド!/ビギナーから経営者まで、全業界の「この先10年の地殻変動」が1冊ですべてわかる!/Forbes誌「2020年のトップ10ビジネスブック」選出/米Amazonレビュー1,000件突破(☆平均4.7)の大ベストセラー、待望の日本語版。小売、広告、エンタテインメント、交通、教育、医療、長寿、金融、不動産、環境……テクノロジーの“融合"によって、大変化は予想より早くやってくる。エリック・シュミット(Google元CEO)、クリントン元大統領らが世界のビジョナリーが支持する「シリコンバレーのボス」が、この先10年のビジネス・産業・ライフスタイルを1冊で解説!(Amazon内容紹介より)
『サイバーグレートゲーム:政治・経済・技術とデータをめぐる地政学』土屋大洋 著/千倉書房
各国の経済活動、民主主義に対するサイバー攻撃は常態化しつつあるが、そこには地政学的リスクが色濃く現れている。安全保障、選挙干渉、サプライチェーン、外交、各分野に迫る危機の実情を分析する。(Amazon内容紹介より)
『最新Webマーケティング2021』Web Designing編集部 著/マイナビ出版
「リモートワーク」「ウェビナー」「オンラインツール」など、オンラインをベースにしたワークスタイルで効率的、生産的なマーケティングを行うための基礎から応用までの知識と実践方法を、図解でやさしくまとめた1冊です。非接触前提のビジネスの新しいノウハウも解説と事例でフォローする、Webビジネス担当者が直面している「困った」を解決してくれる書籍です。(Amazon内容紹介より)
筆者プロフィール:成田全(ナリタタモツ)
1971年生まれ。大学卒業後、イベント制作、雑誌編集、漫画編集を経てフリー。インタビューや書評を中心に執筆。幅広いジャンルを横断した情報と知識を活かし、これまでに作家や芸能人、会社トップから一般人まで延べ1600人以上を取材。『誰かが私をきらいでも』(及川眠子/KKベストセラーズ)など書籍編集も担当。