身近なデバイスの使いやすさを
PC上に再現した「ClassPad.net」
Product:ClassPad.net
電子辞書「EX-word」のメーカーとしてその名が知られているカシオ計算機が、1人1台端末時代の教育現場に向けて、オンライン学習プラットフォーム「ClassPad.net」の提供をスタートした。高等学校向けに提供を開始した本プラットフォームだが、2022年4月からは小中学校向けのコンテンツを拡充し、さらに幅広い学校現場への提供を進めていく。子供たちが直接触る電子機器を開発し続けてきた同社の、教育市場に向けた思いを聞いた。
本当に使えるテクノロジーで学ぶ
1人1台の端末が児童生徒に普及する以前、特に高等学校の生徒にとって身近な電子機器は電子辞書だった、といっても過言ではないだろう。英単語をはじめとした言葉の意味などを手元で調べ、学ぶためのツールとして、机に1台置いて授業に臨む生徒の姿は少なくなかった。
カシオ計算機は、そうした電子辞書「EX-word」のメーカーとして、教育現場に密接に関わってきた企業だ。国内の販売台数は17年連続で1位(GfK Japan調べ)と、そのシェアは非常に高い。一方で同社は、海外の教育現場では関数電卓の販売台数が多く、その数は年間2,300万台(2019年実績)に上る。「当社の教育事業は、全世界の事業規模で見ると関数電卓の方が大きいんですよ」と笑うのは、カシオ計算機の事業戦略本部 教育BU 関数戦略部 ICTビジネス開発室 室長 上嶋 宏氏。日本は語学ツール、海外は数学ツールの販売に、それぞれ注力してきたカシオ計算機は、世界100カ国以上の教育現場に、学びのテクノロジーを定着させてきた経験と実績を持っている。
「当社の教育事業のミッションとして“Support Classroom with Technology”というものがあります。“テクノロジーで『学び』を支援する”ことを意味していますが、一方で教育現場では本当に使えるテクノロジーでなければ、活用が定着しません。当社はずっとハードウェアメーカーとして関数電卓や電子辞書を作り続けてきました。これらのデバイスの特長は、生徒が直接触るモノであるということです。生徒により近いところにいると自負しており、その立場から、鉛筆や消しゴムと同じような存在になれるくらい、自然に使えるICTツールの提供を行うべく、教育現場の先生方と共に開発を進めていました」(上嶋氏)
学びに必要な機能を一つに
そのICTツールが、オンライン学習プラットフォーム「ClassPad.net」だ。教育現場のICT化が世界的に進む中で、本プラットフォームは2018年から米国で提供をスタートした。その当時は関数電卓の延長線上とも言える、「数学ツール」として提供されており、PC上でグラフなどを作図できる学習ツールとして重宝されていた。そうした中で、日本でGIGAスクール構想をはじめとした教育現場のICT化の機運が高まったことを受け、カシオ計算機は2021年4月1日、日本の高等学校向けにClassPad.netのベータ版をリリースし、同年9月よりVer1.0をリリースしている。
「日本向けに展開するに当たり、国内で当社に求められている語学ツールの役割を、PC上でも利用できるよう『電子辞書』機能を新たに搭載しました。また、開発に当たって日本の教育研究者と会話する中で、『電子辞書は辞書として購入するが、PCは何でもできるツールとして購入している。辞書アプリが全画面を専有してしまってはPCの良さが失われてしまう』と指摘を受けました。そこで、勉強のために使うツールである原点に立ち戻り、『デジタルノート』機能も新たに開発しました」と上嶋氏。
デジタルノート機能は調べた内容や授業の内容をワークスペースにまとめられる。紙のノートのような手書き入力による記録はもちろん、数学ツールで作成したグラフや、電子辞書ツールで調べた内容もデジタルノート上でまとめられる。双方向授業やオンライン授業に役立つ「授業支援」機能も搭載し、課題や答案の送受信や、生徒答案を一覧で確認するようなことも、ClassPad.net上で対応できる。
高等学校向けのClassPad.netでは6教科対応の豊富な電子辞書機能を提供している。しかし、1人1台の端末環境が整備される中で電子辞書の優位性はあるのだろうか。上嶋氏は「単語の意味をただ調べるだけならば、電子辞書は不要でしょう。しかし、辞書には単語の意味だけでなく、そこに例文や活用例も掲載されています。また例文の難易度も高校生向けの辞書のため、勉強の進度に合ったものになっており、学習に最適です。2022年4月からは小中学校向けに、英和辞典や和英辞典、国語辞典、漢字辞典など主要な辞書を収録したプランもスタートする予定で、GIGAスクール構想で急速に高まるデジタルツールへの需要に、ClassPad.netで応えていきます」と語る。
協働学習の活性化に役立つ
ClassPad.netはすでに複数の高等学校での活用が進んでいる。埼玉県さいたま市にある浦和実業学園中学校・高等学校の国語科の授業では、生徒自身が授業中に感じた疑問や課題を辞書機能によって調べ、デジタルノート機能を併用してオリジナルノートを作成してその内容を保存しているという。ClassPad.netはクラウドサービスとして提供しており、スマートフォンからもアクセスできるため、自宅からClassPad.netにログインすることで復習にも生かしている。授業支援機能も活用されており、課題をはじめとした学習の進捗状況の把握や、生徒同士が互いの回答プロセスを確認することで、協働学習の活性化に役立てられている。
上嶋氏は「ClassPad.netをハブとすることで、分からないことは電子辞書機能で調べ、デジタルノートでまとめて復習に生かせることや、学んだ内容を双方向的に共有できる授業支援機能によって、授業の運営効率が大幅に向上しているようです。先生方からは『デジタルツールが学習に役立つことを生徒が実感し、意識や姿勢が変わってきている』といった好意的な声をいただいています」と現場の声を語る。
生徒の机の上をデジタル化するというコンセプトで開発されたClassPad.net。生徒が直接触るツールを開発し続けているカシオ計算機が、1人1台端末時代に向けて新たに投入した本プラットフォームの今後の展開に期待したい。