建設業のコミュニケーションを円滑化したい

2024年4月より、働き方改革関連法が建設業においても施行され、年360時間、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間の時間外労働の上限規制が適用される。一方で、建設業就業者の高齢化の進行や若手人材の不足に伴い、労働人口の不足が懸念されており、今後ますます建設業においても生産性を高めることが求められるだろう。アナログ作業が中心のため、従来ではデジタル化が難しいとされてきた建設業に、生産性向上を図るDXが求められているのだ。そうした背景を踏まえ、情報の伝達を効率化するビジネスチャットツールを提案する。

社内本部・屋外現場間で効率的に情報伝達

 DXを推進するに当たり、まずは建設業の課題をおさらいしよう。

 屋外で作業するケースが多い建設業では、本部から作業現場に指示する場合、多くは口頭による指示になる。しかし口頭の説明のみでは状況が把握しにくく、対応に時間がかかりがちだ。さらに現場での作業をスタートする前に、営業担当者に電話やメールで作業現場に到着した旨の連絡を行う場合もある。営業担当者は始業後だと別の電話応対をしている可能性が高く、電話がつながりにくい、営業担当者側でもメールに対応する時間が取れないなど、屋外の作業現場特有の時間のロスが発生している。このように、屋外の作業現場と社内本部との情報伝達に時間を要してしまっていることが建設業の課題として挙げられる。

 加えて、コミュニケーションツールが組織内でも統一されていないケースがある。現場管理者主導の下で、電話やメール、SMSやチャットツールなどさまざまな手法でコミュニケーションが取られている。そのため、情報伝達の履歴の管理が煩雑となってしまっている。

 こうした課題を解決する手法として、ビジネスチャットツールが求められているのだ。

端末の盗難・紛失のリスクを最小限にする

 それでは建設業のコミュニケーションを円滑化するビジネスチャットツールを見ていこう。

 GPSを基にしたリアルタイムの位置情報データを活用できれば、口頭での分かりにくい連絡をなくし、現場作業員の高精度な位置情報をリアルタイムで把握できる。社員の「作業中」「移動中」などの状況も確認可能なため、外出先での迅速な対応を可能にする。

 大規模な現場では複数の協力会社の社外メンバーと共に働くケースが多く、そうした現場でも情報の配信や告知は一斉に行いたい。しかし、同一のチャットグループに複数の社外メンバーを招待すると、トラブルになりかねない。社外メンバーの権限を制限できるように設定した状態で招待すれば、トラブルの発生を未然に防げる。

 社外に持ち出す端末は、盗難・紛失のリスクが伴う。盗難・紛失の被害に遭ってしまうと、端末に残っているデータが漏えいしてしまう。共有する写真をアプリで撮影すると、写真データを端末に保存しないサービスが有用だ。さらに、サービスを利用する端末を管理・制限できるため、情報漏えいのリスクを減らせる。

 今回はACCESS、L is B、ネオジャパンに製品を提案してもらった。

位置情報を基にした効率的な情報共有

Linkit Maps

ACCESS
シンプル:550円/1ID
※最低ユーザー数10ID
※プランによって利用できる機能が異なる。

 位置情報をオンにすることで移動履歴が自動的に記録されるビジネスチャットツール「Linkit Maps 」を提案する。

 Linkit Mapsは、GPSを基にしたリアルタイムの位置情報データを活用した情報共有が可能なビジネスチャットツールだ。リアルタイムの現在位置に加え、「作業中」「移動中」などのステータスも共有できる。そのため、電話など口頭での作業員の現在地確認の手間を減らし、外出先の即時対応を可能にする。位置情報のオン/オフは個人で設定できるため、プライバシーにも配慮する。

 現場の状況を写真やテキストで地図上に共有できる「トーク内スポット」機能を備えている。現場ごとの情報を写真やテキストで共有することで、現場への指示や作業結果の報告をより明確にし、業務時間を短縮するのだ。また地図上に登録した情報は、トークルームにひも付いた地図ごとにCSV形式でダウンロードできる。そのため、ダウンロードしたCSVファイルを用いれば、日報や週報の作成の時間を削減するのに加え、データ分析にも活用可能だ。

 屋外作業においては、自然災害に被災するリスクがある。Linkit Mapsでは、気象庁の警報・注意報を通知し、エリアの状態を識別できる「Linkit 防災速報」を備える。LinkitMapsの専用アプリの地図上に、危険度で色分けした警報エリアを表示する。昨今激甚化の一途をたどる自然災害の中で、電力・ガス・通信・水道といった社会インフラの保守・保全を行う作業員の安全も確保できる。

 数百万件の設備情報を登録し、検索できる「共通スポット」機能を備える。本機能は、特定の場所の定期点検に最適だ。

 設備保守業者や水道局の導入実績を持ち、GPSを基にしたリアルタイムの位置情報データを活用することで、情報共有を容易にするビジネスチャットツールだ。

社外メンバーと安全なやりとりを実現

direct/ダイレクト

L is B
ベーシック:6,000円/月(利用人数10人まで)

 メッセージの既読/未読を個人別に確認できるビジネスチャットツール「direct/ダイレクト」(以下、direct)を提案する。

 directには、1対1のトークと、グループトークの機能がある。グループトークの途中参加者には過去メッセージの公開・非公開を設定でき、引き継ぎやノウハウの共有をスムーズに行える。

 現場状況の共有を効率化するために、directはさまざまなファイル形式の共有機能を備える。ExcelやPDFファイルといった文書ファイル、写真や動画、音声データも共有可能だ。さらに写真を共有するときには、手書きでメモや図形を描写できる。写真に指示を書き込むことで、現場への指示の時間を短縮するのだ。

 建設現場では協力会社やアルバイトなどの社外メンバーと共に働くケースもある。しかし社外メンバー同士が連絡を取り合うと、社員の知らないところで話が進んでしまい、トラブルを引き起こす可能性がある。こうした事態を防ぐため、社外メンバーをゲストとしてトークに招待する「direct GuestMode(ダイレクトゲストモード)」を備える。ゲストとして招待されたメンバーはほかのゲストの存在が表示されない。そのため、情報の一斉配信や告知といった用途でdirectのグループトークを活用できる。

 directはチャットボットと連携することで、データベース上の情報を取得したり、報告書を作成したりするなど、定型業務を自動化、簡略化できる。連携可能なチャットボットの一例として、チャットボット「写真報告書ボットfor現場(Excel)」がある。チャットボットとトークで会話することで、現場にいながらでもスマートフォンを用いて写真付きの報告書の作成が可能になるのだ。

 誰にでも容易に扱える操作性と、社外メンバーと安全につながれる機能で建設業のDXをサポートする。

サービスを利用する端末を管理・制限

ChatLuck

ネオジャパン
クラウド版:330円
パッケージ版:39万6,000円(ユーザーライセンス100ユーザー)

 クラウド・オンプレミスのいずれにも対応し、柔軟なシステム構成に対応するビジネスチャットツール「ChatLuck 」を提案する。

 昨今高まるセキュリティリスクに対応するために、ChatLuckは高いセキュリティを備える。社内外全てのユーザーを自社で管理でき、メッセージ・ファイルの送信や削除のログ管理を行える。さらに、サービスを利用する端末を管理・制限できる「端末認証」機能や、アプリで撮影した写真データを端末に保存しない「セキュアカメラ」機能を搭載。使用端末の盗難・紛失による情報漏えいへの対策が可能だ。

 ChatLuckは、社外メンバーをメールアドレスだけでチャットに招待できる「ゲストユーザー」機能を備える。ゲストユーザーは、招待されたルームにのみアクセスでき、社内情報にはアクセスできない。加えて、一般ユーザーと同等のセキュリティを適用できる。

 グループチャットでは、複数の話題が同時に進行してしまうことで、重要な話を見逃す恐れがある。そうした課題を解決するためにChatLuckは、個々のメッセージに対して返信を行える「コメント」と、伝えたい相手を指定してメッセージを送る「メンション」を備えている。これらの機能を活用することで話題を整理し、効率的で統制のあるコミュニケーションが行える。

 OpenAIの生成AIによるチャットボットサービス「ChatGPT」とセキュアな連携を実現している。ChatGPTと1:1での会話に加え、グループチャットにChatGPTを追加することで、ルームに参加するメンバー全員がChatGPTに質問し、連続性のある会話が行える。チームとAIが協働することで、新たな価値の創出につながるのだ。

 高いセキュリティを備えながら、ChatGPTと連携することで新たな価値の創出につなげてくれる。

※価格は全て税込