クライアントとの仕事のやりとりをスピーディーに進めたい
コロナ禍でテレワークに取り組む企業が増えた。チャットなどのコラボレーションツールの活用で、テレワーク環境においても社内のコミュニケーションはスムーズに取れる一方で、クライアントなど社外の人とのやりとりは、円滑に進まないケースもある。そうしたコミュニケーション課題を解決するツールを紹介していく。
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テレワーク時の生産性に課題
IDC Japanの定義の中でコラボレーティブワークスペースに分類されるWeb会議ツールやコンテンツ共有アプリケーションなどは、コロナ禍の3密回避を背景に需要が急速に増加している。
しかしそうしたコラボレーティブワークスペースを導入済みの企業でも、生産性の面で効果を発揮できていないケースがある。IDC Japanが発表した国内UC /コラボレーティブワークスペース市場の調査では、テレワークが及ぼす業務の生産性への影響を調査している。例えば、「顧客とのアポイントメント調整/提案」「社内メンバーへの教育/業務進捗確認」などの業務では、生産性が低下したと回答する企業が多い。テレワークでWeb会議ツールなどをある程度活用している状況を想定すると、これをより高度に活用する必要があると言える。
クライアント対応が必要な業務で生産性をアップするには、リモートでのやりとりで確認漏れやタイムラグを生まない仕組みを作ることが重要だ。すでにWeb会議・チャットツールを導入している場合は、チャットやWeb会議機能以外に業務に役立ちそうな機能があるかを確認し、積極的に活用しよう。それがない場合は、次に紹介する選定ポイントをもとに、ツールの導入を検討しよう。
会話・確認作業・通知をチャットで完結
業務の生産性向上に向けて、クライアントとの仕事のやりとりを迅速化・効率化するチャットツール、Web会議ツール、コラボレーションツールの選定ポイントを挙げる。
クライアントとのやりとりはメールで行うことが多く、進捗の共有が煩雑化しやすい。そうした場合に、タスク共有や通知ができるチャットツールが役立つ。チャット上で依頼者にタスクの共有や完了を通知できるので、リモートでも進捗管理がしやすい。
Web会議ツールは、音声認識型のAI機能など、より会議の質を高める機能を搭載していると便利だ。AI機能が外国語の自動翻訳に対応していれば、クライアントが外国人である場合でもスムーズな意思疎通が可能となる。また、音声認識を活用した議事録の自動作成もできれば、より生産性の高い会議につなげられる。
コラボレーションツールは、リアルタイムなコンテンツ共有機能を活用したい。チャットしながら書類を確認したり不足情報を追記したりできるツールなら、複数人の承認が必要な書類確認作業やプロジェクトのリアルタイムな進行を実現する。
今回は、Chatwork、シスコシステムズ、グーグル・クラウド・ジャパンに製品を提案してもらった。
クライアントへスピーディーにタスクを共有
Chatwork
Chatwork
エンタープライズプラン:1,056円/月(1ユーザー)
業務に特化したクラウドサービスと連携可能なビジネスコミュニケーションツール「Chatwork」を提案する。
Chatworkは、標準的なチャットやファイル管理機能に加えて、クライアントとのやりとりの効率化に役立つ機能を搭載している。例えば、タスクの作成/編集をチャット上で行える「タスク管理機能」は、ユーザー自身のタスクの作成に加えて、チャットでコミュニケーションをしている相手に仕事を依頼する際にも活用できる。相手がタスクを完了させると、Chatworkで依頼者に通知される。クライアントとのやりとりもスムーズに行えるだろう。
エンタープライズプランでは、ユーザー管理機能にも対応。ユーザー管理機能では、従業員や取引先など組織内外で登録済みのChatworkユーザーを一覧で確認したり、パスワードを変更したりできる。「チャットログ・エクスポート機能」にも対応しており、登録済みユーザーが参加しているチャットログをエクスポートできる。チャットごとにメッセージやファイル一覧、メンバー情報を表示可能で、コンプライアンス対応の際の監査に役立つ。
他社クラウドサービスと連携可能な点も魅力だ。例えば、経費精算サービス「マネーフォワード クラウド経費」やクラウド人事労務管理ソフト「SmartHR」との連携に対応する。マネーフォワードと連携させれば、経費等の申請や承認関連の通知をChatwork上で受け取れるため、経理部門の担当者が手軽に経費申請を受理できるだろう。
SmartHRとの連携では、SmartHRの更新情報をタイムリーにチャットに通知できるので、従業員が自身の従業員情報を更新したときやマイナンバーが提出されたとき、入力依頼の手続き書類が提出されたときなどに人事労務部門の担当者が確認しやすくなる。これらのクラウドサービスとChatworkを連携することで、従来時間を要していた申請受理業務をスピーディーに進められる。
AI機能で議事録を自動作成
Webex
シスコシステムズ
Starterプラン:1,490円/月(1~50名まで会議を主催可能)
Web会議において外国語翻訳や議事録の作成を自動化する機能を搭載し、コミュニケーションの効率化をサポートするコラボレーションツール「Webex」を提案する。
Webexは、従来から「Webex Meetings」の名称で無償のWeb会議ツールとして提供されてきた。今回、Webexに名称を刷新し、無償版に加えてAI機能を備えた有償版を提供している。
外資系企業とのオンライン商談で外国人の担当者が発話する場合、全員がその担当者の言語に精通しているわけではない。Webexでは、音声認識型AI機能「Webex Assistant」を搭載している。アドオンで機能を有効化してWebex上で発話すると100の外国語を日本語へリアルタイムに翻訳するため、Web会議画面で翻訳内容を表示可能だ。
会議内容を記録して振り返る議事録作成は重要な業務だが、会議を行いながら議事録作成のために記録を行うと、会議中に発言したり思考したりすることはなかなか難しい。また会議後に議事録をまとめる作業が発生し、業務負担も増える。そうした議事録作成作業を自動化できたら会議への全員参加と議事録作成が両立できる。Webex Assistantでは「メモ記録機能」を搭載している。本機能は、Webex内の「CC(クローズドキャプション)ボタン」をオンにして発話内容をリアルタイムに文字起こししたり、キーワードを検出してハイライトとして抽出したりできる。本機能を活用することで議事録作成に役立てられるだろう。
Web会議アカウントを持つ従業員が、社外秘の資料を誤って関係者以外へ共有してしまうリスクもあるため、セキュリティ対策も欠かせない。Webexは、会議向けのデータ漏えい防止機能を新たに搭載している。ユーザーがWeb会議においてWebex内のポリシーに違反した使い方をした場合は、音声などをほかのユーザーに通知してセキュリティコンプライアンスへの違反行動を検知できる。
チャットとコンテンツを並べて同時作業
Google Workspace
グーグル・クラウド・ジャパン
Business Starter:748円/月(1ユーザー)
リモート環境でのリアルタイムなコンテンツ共有や編集、管理をサポートするコラボレーションツール「Google Workspace」を提案する。
Google Workspaceは、チャットツール「Google Chat」、Web会議ツール「Google Meet」、ドキュメント共有「Google ドライブ」などグーグルが提供する業務アプリケーションが統合されており、Webブラウザーのみで複数人の間でのリモートコミュニケーションを円滑化できる。
例えば、コンテンツ、チームメンバー、会話を結び付けてプロジェクトを活性化できる「スペース」機能を搭載している。スペースでは、Google Chatでのチャット内容と、チャット内に共有した「Google ドキュメント」「Google スプレッドシート」などのコンテンツを並べて表示し、リアルタイムに共同編集が可能だ。これにより、リモートでチャットしながらリアルタイムに業務の進捗状況の確認や不足情報の追記ができるため、抜け漏れのないプロジェクト進行をサポートする。
スケジュールアプリ「Googleカレンダー」は、会議予定などを送信できる「招待機能」を有している。Google Workspaceでは、本機能の出欠返信に「会議室で会議に参加する」「オンラインで会議に参加する」の2種類から選択できる。さまざまな場所でのハイブリッドワークに対応し、状況に応じて参加方法を選べる仕様だ。
Google Workspaceでは、ユーザーの端末管理も標準機能で対応できる。例えば、管理コンソールからユーザーの追加、端末の使用状況の確認やモバイルデバイス管理、セキュリティ管理といった設定を一元的に管理できる。また、ID、アプリ、エンドポイントの統合管理プラットフォーム「Cloud Identity」機能にも対応しており、2段階認証やセキュリティキーの要求など、強固なセキュリティ対策を実現する。